ブラジル、インド、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカなど、中国と同盟を結んでいない国々が先頭に立って、米議員たちに、ルールに基づく秩序を解体するのではなく、むしろ完成させる手助けをすべきだと説得に努めることができよう。国際協定の批准が広がれば、グローバル・サウスから米国に対する好感を生み、中国を弱体化させるだろう。
グローバル・サウスは、中露の挑戦を乗り切る唯一の方法は伝統的な西側諸国を超えた同盟とのパートナーシップであることを米国に明確に示すべきである。このような関係を築き、強化する最善の方法のひとつは、国際法を尊重することである。
法律は、国内における不平等を是正するための手段となりうる。条約と国際法が存在する世界は、それが存在しない世界よりもはるかに良いものになるだろう。
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注力すべき米議会への働きかけ
この論説で特に重要なポイントは、次の4点である。
第一に、「国益」が国際関係を支配し、「力が正義」となる時代を迎える中、米指導者たちがこれまで築き上げた戦後秩序の維持に無関心であることは、グローバル・サウスにとって、悪い知らせである。なぜなら国家の行動を調停する国際ルールは、弱い立場の国の利益になることが多いからである。
第二にグローバル・サウスは、米国主導の秩序に背を向け、中国を支持すれば、より危険な弱肉強食の「ジャングルの法則」にさらされることになるだろう。環境、人権、民主的ガバナンスに関して中国を支持すれば、中国の片棒を担ぐこととなる。そして中国の術中にはまり、中国の台頭を助長し、米国の衰退を加速させる危険性がある。
第三に、中露の挑戦を乗り切る唯一の方法は、伝統的な西側諸国間の同盟を超えたパートナーシップである、ということを米国に明確に示すべきである。このような関係を築き、強化する最善の方法は、国際法を尊重することである。国内法が国内において不平等を是正する手段となりうるように、条約と国際法は、それが存在しない世界よりも、より公正な世界秩序の構築に貢献している。
第四に、米国は、これまで50近くの条約を批准しないか、脱退している。グローバル・サウスにできることは、米国の偽善を非難するだけでなく、時間はかかろうが、米議会議員に、ルールに基づく秩序の解体ではなく、むしろ完成させる手助けをすべきだとロビイングすることである。国際協定の批准が広がれば、グローバル・サウスは米国に対する好意を持ち、中国を弱体化させるだろう。
