2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月6日

 これら4点はいずれも重要な視点であるが、トランプ大統領が次々と繰り出す措置への対応に世界が四苦八苦している中で、議会への働きかけは特に重要と思われる。

 ただし、グローバル・サウスが同様の認識を共有するとしても、現実には、多くの国はそのような対応を取る余裕はなく、「自国にとっての実利」を念頭に態度を決めるであろう。米国が新たに打ち出す措置が、自国に不利益を生む場合、当該国において反米感情をはぐくみ、それを中露が自分たちの利益のために活用する余地を生むことを念頭に置いておく必要がある。

実際にトランプはどう動くか

 その視点から、トランプ第二次政権がこれまでに打ち出した措置を見てみると、メキシコ・カナダ・中国に対する関税、パナマ運河・グリーンランドの所有権譲渡の要求、世界保健機関(WHO)・パリ条約・人権理事会離脱、出生地主義の否定等は、「中国」を念頭に置いた措置と考えられる。また、1000万人以上と言われる不法移民の強制送還についても、自国民の受け入れを要求された国には一時的に反発を生むであろうが、最終的には自国民を拒絶しがたいと思われる。

 その一方で、例えば米国際開発庁(USAID)解体については、米国内の反発に加え、支援対象国や他の援助国、国際援助機関において「対米不信感」を生むことは間違いなく、中国につけ入る余地を提供するであろう。

 いずれにせよ、トランプ政権は発足して約1カ月半に過ぎず、これから更なる混乱を内外に生むと思われるが、米政府が弱体し機能不全に陥ることだけは、何として避けてもらいたい。

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