フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのアラン・ビーティが、2月12日付け論説‘Trump is giving a green light to corporate corruption abroad’で、トランプは海外腐敗行為防止法の執行凍結により経済取引上の贈収賄を容認しようとしていると批判している。主要点は次の通り。

海外腐敗行為防止法(FCPA)の執行凍結についてのトランプの理屈は、鉄鋼・アルミニウム関税、相互関税と似たようなものだ。彼は、FCPAが米企業による外国官吏への賄賂を禁止していることが、外国企業との競争において米国に不利に働くと考えている。自由奔放な経済人にとって、この法律は制約になる。
しかし、それはFCPAが公平な競争を妨げるどころか、むしろそれを促進することを無視している。この法律は、米企業だけでなく、米国とわずかにでも関係を持つ企業全てに適用されることで、事実上、贈収賄防止のための強力な国際的枠組として機能してきた。
FCPAは1977年に制定され、98年に大幅に拡大された。米国司法省と証券取引委員会が世界中の米国企業を管轄できるようになったことで、この法律は米国の税法の域外適用と同じような性質を持つようになった。つまり、米国の反腐敗の伝統が世界的規模で行われるようになった。
忘れがちだが、90年代まで企業による賄賂は許容されただけでなく、時には奨励すらされた。93年に反腐敗運動団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」が設立され、99年に経済協力開発機構(OECD)贈賄防止条約が成立するまで、FCPAは数少ない制約のひとつだった。
FCPAの適用範囲は拡大し、米企業に限らず、米国外で働く米国市民や、米国の銀行を利用する、または米国で証券を発行する外国企業にも適用されるようになった。
これらの規制は、経営者が賄賂を渡すことを慎重にさせるだけでなく、賄賂の要求を断る良い言い訳にもなる。また、米企業に公平な世界的競争環境をもたらすことにもなる。
市場での競争ではなく、多額の賄賂で企業間競争が進むことになれば、誠実な経営者や消費者の利益にはならない。トランプがFCPAに今の活動を止めさせたとしても、米企業にとって国内外でのビジネスがやり易くなる訳ではなく、世界はより一層腐敗したものになるだけだ。
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