2024年11月26日(火)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年11月11日

 こんなことを20年続けていたら、中央経済社という出版社が、本を出してくれると言ってくれました。それまで経理・財務の本を何冊かその出版社で書いてましたから、気を遣ってくれたのかもしれません。でも、意外に売れてすぐ2刷になりました。

 新聞などの取材でゴロ合わせが趣味と答えてましたから、「信越化学の経理部長の趣味は日本史年代ゴロ合わせらしい」と、ライオン社という出版社も、本を出せないかと来てくれました。そのころ中央経済社の話が進んでいたのでお断りしたら、それでは「英単語のゴロ合わせ本を出そう」となりました。

 メルビルの白鯨で英語教師になる夢を断念した私にとっては、英語も鬼門です。しかし、大好きなゴロ合わせから入ることで、英語も楽しく学ぶ気持ちになれました。61才の時に相次いで上梓した『楽しく覚えられるゴロ合わせ英単語』(ライオン社)、『楽しく覚える日本史年代「ゴロ合わせ」』(中央経済社)は私にとってとても思い深い本です。

 また、渡辺君の芸術力に感化された影響もあったのでしょう、妻に「あなた、ワーカーホリックだから一緒に始めない?」と誘われて、53才で社交ダンスも始めました。7年かかって60才で社交ダンス教師の資格を取り、66才になって『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、70才で『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)という本を書きました。

 趣味といえば、亀井君の趣味の絵画は、個展を開くまでになっていて、その油絵はとても優しい色であるそうです。これは私一人の勝手な想像ですが、亀井君も渡辺君の芸術力の影響を受けたのかもしれません。

 日本史も英語もダンスも、まったく得意ではない私ですから、実力が下の下の人間にしか書けない本を書こうと思いました。どの本も、「“下手物(げてもの)”趣味では恥ずかしい」というプライドがあったら書けない、目線の低い本になっています。

 「生涯一(いち)経理・財務マン」として、狭い一つのこと(経理・財務)を掘り下げ続けた私は、その掘り下げがあったからこそ、ときどき寄り道もすることができました。若い時代の体験、気持ちがもとになって、何十年も経ってから本を書かせてもらえたことは、私の人生をほんとうに豊かにしてくれます。

 「若いときに感じた悔しい気持ち、あこがれの気持ち、それはすぐに形にならないけれども、ずっと心にしまっていれば、突然思いもよらない形で花開くことがある。でもそれは、あくまで、一つの狭い専門分野をしっかり掘り下げた上に、小さく開くものなんだ」そんなことを感じています。

 親友とは言えない友だち、友人とは言えない友だち、恩師とは言えない先生。このような人たちから、間接・直接に自分が受けた影響を、これからも大切にしたいと思います。

 今朝、出掛けに42年前のことをふっと思いだし、妻に聞きました。「娘時代におふくろさん(常〔つね〕さん)に言われて、柔術か何かを習っていたと言ってたよね?」。すると「護身術よ」という答えが返ってきました。あれ? 亀井君が6段である合気道も護身術だったな、と思いました。妻は無段で亀井君は6段ですから、これは夫婦ともどもペコペコしなくてはなりません。

 

■今回のコラムに関係する金児昭氏の著作一覧






小尾毅先生
「私も書くからあなたも
1984年
(47才)
『法人税実務マニュアル』
 (日本実業出版社) 
東畑精一先生
 「狭く深い実務が大切」
1989年
(52才)
『ビジネス・ゼミナール
会社「経理・財務」入門』
(日本経済新聞出版社)
※1989年当時は
  『会社経理入門』





大学受験で
日本史60点満点で7点
1998年
(61才)
『楽しく覚える日本史年代
「ゴロ合わせ」』(中央経済社)
英語の教科書
 「白鯨」(メルビル)で挫折
1997年
(60才)
『楽しく覚えられるゴロ合わせ
英単語』(ライオン社)
英語の教科書
 「白鯨」(メルビル)で挫折
1998年
(62才)
『The corporate  accounting
in Japan』(中央経済社)
英語の教科書
 「白鯨」(メルビル)で挫折
2002年
(66才)
『日英対訳 英語で読む
決算書が面白いほどわかる本』
(中経出版)
渡辺蔚君の
芸術力の影響
2003年
(66才)
『お父さんの社交ダンス』
(モダン出版)
渡辺蔚君の
芸術力の影響
2007年
(70才)
『私がほしかったダンス用語集』
(中経出版)

 

■読者のみなさまへ
筆者自身が述べておりますように、このコラムは、読者の方々からいただいた情報のおかげで、当初は想定していなかった広がりを見せております。どのようなことでも結構ですので、ご感想などございましたら、こちらからお送りいただければ幸甚です。 (編集部)

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