2024年4月26日(金)

対談

2016年2月24日

飯田 相続税への抵抗はものすごく強くて困ってしまいます。

 近年、消費増税の必要がしきりに叫ばれているのは、「日本の税制は所得課税に傾いている」と問題視されてきたからです。いわゆる直間比率是正論ですね。その一方で、所得課税にはいわゆる「ビルトインスタビライザー」の機能がある。景気の加熱時には税率が高くなり景気を冷まし、低迷時には税率が低くなって景気を浮揚させるので、景気を一定の幅で安定させる働きがあるのですが、税収として見れば安定性に欠けるので、間接税比率を高めて税収を安定させたいということが議論の根幹にあります。

 しかし先進国間で比較すれば、税収における消費税の占める割合では、日本はドイツに次ぐ高さです。本来なら、これから上げるべきは資産課税の方です。

 資産課税は基本的に、毎年徴収する固定資産税か、相続時に徴収する相続税の2パターンです。僕は相続税の方が理解も得やすいし、効率的だと思っていますが、その是非は実務サイドからの意見をもっと聞きたいと思います。

 自分自身の将来のために溜めた資産の収奪を、正当化することは難しい。一方で相続税は、親が持っていた分から引く税であって、子が取られるわけじゃない。どちらが自分の子に優しいかは明白なのですが、高齢者層ほど相続増税は忌避します。

抵抗する「親」たち

井上 生きていた証しになる何かを残したいと思ってしまうんでしょうね。子から孫、またその子へと永遠に家族が続いていくような感覚は、資産家ほどもってしまうものなのかも知れません。

飯田 たとえば相続税が一律20%となれば、税収は約16兆円になり得る。税制問題はそのかなりの部分が助かるわけです。20%は富裕層にとってはむしろ減税で、相続財産が5000万~1億円当たりには増税になってしまいますが。

井上 とにかく相続財産から2割出していただいて、サステイナブルな社会にしませんか、ということですよね。

飯田 その税収を原資に、公教育を充実させることが必要だと思うんです。小中学生に提供される、学校以外の公的な教育の場ですね。そこがもっと充実してもいいんじゃないかな、と。


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