サムライ弁護士の一刀両断

2016年3月4日

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島野製作所VS アップル社の概要

 さて、アップル社が被告となった事件とは、一体どのようなものであったのだろうか。2014年、株式会社島野製作所(「島野製作所」)は、アメリカのアップル社に対して、2件の訴訟を東京地方裁判所に提起した。一方は、アップル社が独占禁止法に違反したということを根拠に、損害賠償を求め、他方は、アップル社が島野製作所の特許権を侵害したということを根拠に、一部のアップル社製品の販売差止と損害賠償を求めた。本稿に関わるのは、このうち、前者の独占禁止法違反に関する訴訟である。

 島野製作所は、東京都荒川区に本社を置く、プローブピンという精密部品を製造するメーカーである。訴状によれば、島野製作所は、06年にアップル社のサプライヤーとなり、継続的な取引を行ったが、12年になって発注が停止され、これを再開するため、翌年には減額やリベートにやむなく応じるに至ったとのことである。島野製作所の主張では、こうした取引の停止や減額、リベート要求などが、独占禁止法に違反した、というわけである(なお、訴状の閲覧に際しては、裁判所に赴き、所定の手続きを踏む必要がある。筆者は、本稿執筆のため訴状を閲覧したが、営業秘密にかかわるような部分は大幅に閲覧が制限されている)。

カリフォルニア州で行われるべき裁判と
主張するアップル

 これに対し、アップル社は、独占禁止法違反を否定しただけでなく、この訴訟が、日本ではなく、米国のカリフォルニア州で争われるべき訴訟である、と反論したのである。島野製作所はこれを否定し、日本の裁判所でも解決できる紛争であると主張し、ここに国際裁判管轄の問題が争われることとなった。

 カリフォルニアで訴訟追行することになれば、基本的にすべての手続きが同地で行われることになる。カリフォルニアの裁判所に出頭する必要があり、日本企業が手続きを進めていくには、費用も手間もかかる。ここで、割に合わないと判断すれば訴訟を取りやめる可能性も出てくる。相手に負担が大きいことは、裏返せばアップルにとって有利な事情といえる。さらに、地元企業と日本企業が戦っているとなれば、陪審員や裁判官は、地元企業を事実上贔屓するかもしれない。

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