膨らむ先渡し市場
ブレント原油先渡取引の胴元、シェルグループは、この仕組みを大きく育てようとした。クラブのメンバーを増やし、メンバー間では、原油の受け渡し期日前であれば差金決済ができるようになった。つまり今日35ドルで買ったが、数週間後、市況が34.5ドルに軟化した場合、買ったプレイヤーは50セントの損失を支払えば取引から退出できる。
そこで空売り・空買いをするクラブメンバーが現れて、瞬く間に取引のかさが膨らんだ。シェルやBPは北海原油の大生産者である。だから、大規模に先売りをしていって、将来の販売価格を確定させたいのだった。
そして、「最後の審判の日」。86年に原油マーケットが崩落した。いわゆる逆オイルショックである。82年、アラビアンライト原油の公式価格は34ドル、それが86年の年央に10ドルを割ったのだ。胴元は、大量高値先売りポジションを持っていたから、ガバチョと儲けた。貧乏くじを引いて大変なことになった会社がいくつも。
・・・ここで紙数が尽きた。
英国伝統のジェントルマンズクラブの会則と運営に準拠したブレント原油先渡取引(Forward)のしくみが、大西洋を渡ったアメリカで先物市場(Futures)として大衆化する話しは、次回に続きます。アメリカの石油先物市場は、マネーのプロフェッショナルたちが天下を取った。彼らのトレーディングは簡単だ。買い圧力が優勢か、それとも売りが優勢か、を教える情報に機敏に反応して価格を付けてゆく。マネーのプロフェッショナルにとっては、原油も金も、ユーロ/ドルのスプレッドも、株も債権も、おんなじに見えるのだ。
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