2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月23日

 地域の力のバランスは急速に変化している。ある一国が、共有の水路と航空路に対する自己の権利を主張する力を持つ状況となりつつある。これは大戦以来、アジアにおける圧倒的な力の出現の阻止に努めてきた米国の戦略に対する打撃である。

 中国がその目標を達成したとしても、必ずしも戦争を意味しない。むしろ、力は権利になり、ルールは最強の国によって作られる、ということの暗黙の了解を意味しよう。それは自由主義的な国際秩序を脅かす世界的無秩序のもう一つの証拠である。

出 典:Michael Auslin ‘Asian Escalation: Why China Picked Woody Island For Its First South China Sea Missiles’(Forbes, February 18, 2016)
http://www.forbes.com/sites/michaelauslin/2016/02/18/asian-escalation-why-china-picked-woody-island-for-its-first-south-china-sea-missiles/#368460ad4147

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西太平洋からの米軍駆逐狙う中国

 この論説は、南シナ海で覇権を求める中国の良く知られた戦略的な行動を、西沙諸島へのミサイル配備という新たな展開を踏まえて、改めて記述し、警告を発するものです。中国が西太平洋から米軍を駆逐することを狙っていることに疑いはありません。

 問題は、どう対応するかにありますが、少なくとも南シナ海における力のバランスが致命的に悪化しないよう努力する必要があります。そのためには、米軍のプレゼンスを目に見える形で強化すること、すなわち、米国が「航行の自由」作戦の回数を増やすとともに、そのビジビリティを高めることが必要と思います。ビジビリティを高めることが、中国とこの地域の諸国に、米国の決意を知らしめることになります。過去2回の「航行の自由」作戦では、米国はその態様と目的を公に説明することに及び腰でした。当然のことを当然のように行うのですから、ことさら説明はしないという立場なのかも知れませんが、米国の弱腰振りを印象づけることになっているように思います。

 日本もできることをやる必要があるでしょう。

  
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