ここまで品性下劣な日本人を見ていて胸が悪くなった。私が「まあまあ、そのくらいで彼女を解放してやったらどうですか?」とやんわり水を差したら「なにあんたいい恰好してんの? ここは東南アジアなんだよ」と息巻いた。Yはじめ困窮した邦人年金生活者は誰にも相手にされず、為すべきこともなく人生の時間潰しをしているように思えた。
“セルビアの賭博師”は世界格闘技修行行脚の途上
12月18日 日系ゲストハウスを断念してから延々と一時間以上歩いてチェンマイ旧市街の城壁の東側のピン川沿いのゲストハウスにチェックイン。4階建ての古びたゲストハウスで屋上のペントハウスの部屋にはベッドが3つ並んでいた。屋上からの見晴らしは素晴らしく旧市街を囲む城壁、手前にはピン川が流れており遠くには山々が広がる最高の眺望。さらに屋上にはテラスやキッチンが設けられていて申し分ない。
テラスでは白人の青年がパソコンで何かしている。聞くとインターネットでポーカー賭博ゲームをしているのだと。世界中に愛好者がおり24時間オープンしており随時参加可能なのだと。あらかじめメンバー登録して自分の口座を開き、口座に資金を振り込んでおく。口座の残高まで賭けることができる仕組みである。
テラスで満月を眺めながらビールを飲んでいると先ほどの青年がゲームを終えて一緒にビールを飲んだ。彼はセルビア出身。故郷を出てから既に1年以上バックパッカーをしている。旅費稼ぎのため、一日およそ100ユーロくらい稼ぐことを目標にして毎日数時間ゲームをしている。平均すると1カ月で1000ユーロ近く稼いでいるが、これ以上を狙うと大負けするので旅費をなんとかカバーできれば十分という心構えでゲームに臨んでいる。
私は彼を“セルビアの賭博師”(セルビアン・ギャンブラー)と命名したら、「素晴らしいネーミングだ。クールな称号だ。ありがとう」と私がびっくりするほど相好を崩して喜んでいた。私としてはロッシーニのオペラ“セビリアの理髪師”をもじっただけなのだが。
賭博師は静かなどちらかというと寡黙で内省的な青年だ。御多分に漏れず故郷のセルビアではたいした仕事がなく貯金をはたいて旅行を始めた。大柄ですごい筋肉なので何かスポーツをしているのか聞いたところ「マーシャル・アーツ」という。総合格闘技だ。そういえばK1など格闘技の世界では大柄なスラブ人の格闘家が多い。彼の夢は格闘家として名前を上げて金を稼ぐことだという。