こうした援助によって、中国の影響力が必ずしも拡大するわけではない。米AidDataの研究によれば、126カ国300人の政府高官は、中国の「アジェンダ設定力」を低く評価している。
中国経済停滞で援助にも影響及ぶ可能性
中国の景気減退は、援助の否定的認識をさらに強めそうである。ランド研究所の調査は、中国の援助はかなり遅れると結論づける。例えば、パキスタンとインドネシアに対する事例では、十数億ドルの援助のうち、達成されたのは10%未満だという。もちろん、援助プロジェクトにおいて遅延は珍しくないが、中国の場合、経済停滞によって、この遅れがさらにひどくなる可能性がある。
中国の支援事業は中国市場のリソースを守ることに注力している。また、今日の人道危機に際して、中国の存在感はない。直近の事例はシリアである。中国のシリア難民への援助は、合計6000万ドルに達したが、米国の今年3月までのシリア難民支援は37億ドルである。米国は、今後さらに5億800万ドルを提供すると約束している。また、欧州全体での貢献は45億ドルに達している。
もっとも、対外援助は、中国の国際的役割を強化する一手段にすぎない。しかし、習近平の対外援助戦略の下では、いかなる政治的見返りもひどく遅れるに違いない。
出 典:Kent Harrington‘China’s Illusory Global Leadership’(Project Syndicate,
March 2, 2016)
http://www.project-syndicate.org/commentary/chinas-illusory-global-leadership-by-kent-harrington-2016-03
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