2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月8日

 CIAでアジア情勢分析を担当していたハリントンが、3月2日付のProject Syndicateで、シルクロード構想やAIIBを通じた中国の対外援助が注目されているが、その多くは中国自身の利益を優先したものであり、被援助国は期待するほどの利益は得られないだろう、と述べています。要旨は以下の通りです。

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ビジネス前提の中国援助

 中国経済が失速し、改革が後退する中、習近平主席は懸命に中国がより広範な国際的役割を担える大国であることを示そうとしている。

 昨年11月のAPECでは、中国がここ数年で数十億ドルの対外援助・投資を行ってきたことを宣伝した。また中東においては、中国企業がテヘランの地下鉄やサウジの高速鉄道建設を請け負っている。昨年6月には、エジプトとの間で計100億ドルとなる15のプロジェクトに合意した。中国当局は、ラテンアメリカにおいて、2500億ドルの新たなインフラ取引をすると見越している。
また、シルクロード基金とAIIBは、それぞれ400億ドルと500億ドルを建設に投資することを約束している。

 しかし、中国の援助は主にビジネスを前提としているため、被援助国も中国の支援モデルと動機について半信半疑になっている。2013年に行われたランド研究所の調査によれば、中国の対外援助と公式ファイナンスの80%以上は、原料採取と中国への資源輸送に使われる道路や橋、港湾の建設に投じられている。

 中国による援助の3分の2は金融プロジェクトと原料に対する借款であり、その半数以上は中国企業からの調達に使う「紐付き」援助である。習主席は昨年9月の国連総会演説で、世界の最貧国のために新たな借款と教育・ヘルスケアのための資金援助をすると強調したが、それらは厄介で、かつ多くは紐付き援助のままである。


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