2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月12日

 上記論説で、元米国防総省政策企画担当次官補代理のトーマス・マンケンは、豪州の安全保障政策の重要な要素について、明解な均衡のとれた全体像を提供しています。

 突然の辞任に追い込まれたアボット首相の後を継いだターンブル首相は、どちらかというと親中派に近いのではないかとみられていましたが、米国や日本などとの関係強化を打ち出し、今回、かかる国防白書を出したことに安心感を覚えます。日本としても、優先順位の高い政策として、豪州との安全保障、外交分野での関係強化に一層努めていくことが重要です。

同盟国間のネットワーク強固に豪州が果たせる役割

 インド洋とアジア太平洋の間に位置する豪州の戦略的な役割は極めて重要です。また、豪州が日本、インド、インドネシアなどとの関係を深め、積極的な役割を果たすことは、米国を中心とする同盟の多国間ネットワークを強固にします。それは、米国の政策文書が提唱している政策でもあり、厳しい環境にあるアジア太平洋の安定には、必要なことでしょう。

 他方、この記事も言及しているように、ここ数年、豪州では、米豪同盟の価値について種々の議論があるようです。2014年には、フレーザー元首相が「危険な同盟」と題する著作を出し、その後も米豪同盟により豪州は米中戦争に巻き込まれるといった議論をして、驚かせているようです。さらに、民間団体マリックビル平和グループは、2015年の年国防白書について意見書を出し、米国との同盟により豪州はいくつかの不必要な紛争に関与することになった、対米同盟は豪州の独立を妥協させるものだ、地域の緊張を高める、豪州の最善の利益にならない、2009年以降米豪関係は強化されているがこの政策について政府はきちっとした説明をしていない等述べています。

 これらの同盟管理に係る動きには、米国の安全保障関係者も関心を払っているようです。日本もよく注視していく必要があります。

  
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