2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2016年4月29日

諦めざるを得ない「管理職」

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 山田さんは39歳のとき、経営者が交代したことで会社の考え方と自身の考え方に齟齬が出始め、宝飾品の会社を退職。再び専業主婦になった。ただ半年ほど主婦をつづけるうち、「このまま仕事をしなくなって自分はどうなっていくのか」と、言い知れぬ不安を感じるようになった。子育てだけでは自分の未来を描けなかった。そんな時、後押ししてくれたのは小学校4年生の長男だった。「お母さんは働いたほうが良いと思う。仕事で帰りが夜遅くなっても僕たちは大丈夫だから。お母さんが働いているから受験に失敗したとは言わせたくないので僕たちもがんばるよ」。

 山田さんは再就職活動に取り組むために就職サイトに登録し、現在の会社に再就職した。面接では「何でもやります」とアピールしたという。「こちらがキャリアを高望みするわけではなかったので、会社としては採用するハードルは低かったのではないかと思います。今まで仕事を続けてきて良かったことは、社会人経験を子育てにも生かせることです。息子2人にも社会人として生きていくことや、仕事のこと、キャリアとはこういうものだということのアドバイスも、実感をともなった形ですることができます」。

 「今は女性だけではなく、従業員の働き方の多様性を広めていくために、所属する部署で在宅勤務のテストを始めています。育児をしながら働く父や母がテストの対象となっています。働くママにとっては保育園に入れず復帰が遅れる、または叶わないという事例が実際にありますし、保育園に入れたとしても、小学校に入れば、学童やPTAの問題などもあり、いつまでも心配や苦労はつきません。働くママだけが守られるべき存在でないとは理解しつつも、もう少し世間の目が温かくあったらと思います」


2016年4月から女性活躍推進法が施行され、従業員301人以上の大企業は、管理職比率の設定などの計画策定が新たに義務づけられることとなった。一方で、企業で働き続けるために、その時々で仕事への意欲を抑えたり、昇進を諦めたりしなければ生活が成り立たないという働くママの現実を直視する必要があるだろう。「女性活躍」の掛け声だけでは、真に女性が活躍できる環境を整備することはできない。

Wedge5月号では、出産を経て退職した母親たち4人を追った「正社員の椅子を捨てた女性たち」の他、待機児童が増える背景や、女性活躍社会を実現するための働き方改革や正社員改革についても特集しています。

■特集「女はつらいよ 待機児童だけじゃない」
  ・保育士の賃上げをしても待機児童はなくならない
  ・保育政策インタビュー(横浜市長 林 文子、世田谷区長 保坂展人)
  ・会社に長時間しばりつけない働き方を
  ・育児制度が充実した企業で起こる「資生堂ショック」
  ・解雇規制が奪う女性のキャリア

  
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◆Wedge2016年5月号より

 


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