自暴自棄のテロ激化
問題はこれだけではない。ISの戦闘員の半分はシリアやイラク以外からやってきた外国人戦闘員。当然、それぞれの母国に強制送還するという話になるが、引き取りを拒否する国も多く、複雑な外交問題にもなる。
米国はアフガン戦争やイラク侵攻でそれぞれバグラム空軍基地(アフガン)、アブグレイブ刑務所(イラク)、グアンタナモ収容所(キューバ)といったところに捕虜を収容した。しかし囚人の日常的な虐待などで国際的な批判を浴び、収容所の管理・運営に懲りている米政府はこの捕虜問題に関わりたくないのが本音だ。
追い詰められている当のISは5月に入って自暴自棄ともいえるテロを一段と激化させている。イラクのバグダッドでは11日、シーア派地区での自爆テロで約100人が死亡、その後もテロが相次いでいる。ロシア南部やサウジアラビア、エジプトなどでもIS勢力によるテロが急増している。
捕虜問題が顕在化するのは「オバマが去った後のヒラリー・クリントンかトランプの時代だ」(ワシントン筋)。新大統領が就任早々、この問題に翻弄されることになるのは間違いない。
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