イラク駐留軍は現在、4000人を超えているが、短期的な派遣部隊も含めると駐留軍の規模は5000人を軽く超えるまでに膨れ上がっている。特に北部のクルド人の主要都市アルビルには、IS幹部の暗殺や拘束を狙う特殊部隊グリーン・ベレー約400人が駐留している。
オバマ政権はシリアでも北部のトルコとの国境地帯のクルド人地域に特殊部隊約300人を投入し、ISの首都ラッカへの侵攻作戦を検討中だ。ラッカ侵攻作戦の主力はシリア人の反体制派武装勢力。これをクルド人の武装組織が側面支援する態勢だ。
こうした中で米国や欧米の同盟国の間で深刻になっているのが、今後数千人規模で予想されるISの捕虜の扱いだ。これまではISの捕虜は大きな問題にはなってこなかった。なぜなら彼らは戦闘で死ぬまで戦い、最後は自爆テロで自ら命を絶つことが多かったからだ。
捕虜2000人中、300人がISの戦闘員
しかし、昨年末のイラクの都市ラマディの陥落では、2000人弱がイラク軍の捕虜になり、300人がISの戦闘員だったことを自供。こうした捕虜をどこに収容し、誰がどんな権限で調べ、誰が訴追し、どこで裁くのかなど、その扱いが大きな問題となってきている。
とりわけ、内戦で中央政府が機能していないシリアの場合は、捕虜の扱いがイラクよりはるかに厄介になる。数百人規模の捕虜であれば、まだ対応が可能だろうが、数千人規模になれば、ISと戦闘してきたシリア人武装勢力の手に余り、報復の意味もあって、集団処刑が頻発するのは必至だろう。
かつて米軍が9・11米中枢テロの報復でアフガニスタンに侵攻、イスラム原理主義のタリバン政権を打倒した時、米軍とともに戦ったアフガンの武装勢力がタリバンの戦闘員の捕虜、数千人を虐殺した悪夢が蘇る。