2024年11月21日(木)

田部康喜のTV読本

2016年5月20日

 ドラマに戻ろう。ベランダの作業を終えて、缶ビールを飲んでいるときに、弟子の柊がベランダ―のところにきた理由を打ち明ける。親の転勤で学校を頻繁に変わったために、友人ができずに、自宅で植物を育てていた、というのである。

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 ベランダ―は、クレソンの根の話をしながら、柊にいう。

 「水だけであんなにでかくなって。ミネラルをすって光合成ができないので、葉は小さい。いつか鉢植えにすれば、葉っぱを茂らす日もくるから」と。

 「ありがとうございました、師匠」と、柊は頭を下げて、ベランダ―のマンションを出ていくのだった。

 「植物男子~」は、深夜に見る者の心をとらえて、シリーズを延ばしてきたのだろう。ベランダ―を志す人も増えているだろう。

見えがくれする都市

 日本の都市は、欧米の都市に比べて境界線が曖昧である。世界的な建築家である槇文彦氏の説である。隣地と隣地をくっきりと分けるのではなく、その間に行き止まりであっても路地が形成される。街路を通ると、家々から塀を越えて樹木の枝や葉が伸びている。

 都市の形がくっきりとはみえない。日本の都市の特徴を槇氏は「見えがくれする都市」と呼ぶ。

 ベランダ―は、都市が高層化しても、植物の栽培によって境界を曖昧にする伝統を引き継いでいるようである。


  
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