―― 以前ミャンマーで取材したことがありますが、日本のローファームが進出するはるか以前に韓国勢が進出して、日本企業の仕事などを受けていた例などがありました。
太田氏 ミャンマーもそうですし、ベトナムもそうです。韓国は自国の経済の市場が小さいので企業がどんどん国の外に出て行きますが、ローファームにも同じことが言えます。
―― やはり韓国企業の最近の事例はローファームと二人三脚、よく言われるように企業の用心棒と一緒に活動しているというイメージでしょうか。
中村氏 いまはもう単なる用心棒以上の存在だと思います。韓国企業はかなりアグレッシブに活動しているというか、そんなイメージがあります。
太田氏 確かにアグレッシブですね。
―― 執筆に当たって印象的だったのはどんなことですか。
中村氏 多くの弁護士に具体的な事例をもとに話を聞きました。支障ない範囲で裏話やエピソードなども豊富にご紹介していただいたので、インタビューの一つ一つが非常に面白かったです。これは自分自身の反省でもあるのですが、経済記者は注意しないと、どうしても広く浅い取材に流れてしまいがちです。今回の取材で、企業の問題解決やその将来を考える弁護士たちがどのように企業と向き合っているかが良くわかりました。
ライブドア事件の時の経験
―― ライブドア騒動の時に法律的な知識の重要性を認識されたそうですね。
中村氏 当時、どこの事務所の弁護士が何を担当しているかなどがもしわかっていたら、また別の展開があったかもしれませんし、M&Aの勘所の論点や法律がわかっていたら、そちらの方面からもっと深い取材ができたかもしれません。当時は正直なところライブドア関係者の追っかけに忙殺されていましたので、いまとなっては不明を恥じ入るばかりです。
―― 欧米ではジャーナリストは弁護士に取材したりしているのでしょうか。
中村氏 それはもちろんあると思います。最近話題になった米ボストングローブ紙の世紀のスクープを描いた映画「スポットライト」でも記者が弁護士に取材する部分が多く出てきます。もっともこれは刑事事件ですが、経済事案や経済事件でもそうしたことは多くあるはずです。ローファーム側も親しくしているメディアがあるでしょうから、取材したりされたりという関係は必ずあると思います。