2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年6月4日

弁護士を使いこなせない日本企業

―― 日本の企業は弁護士を使いこなせていないのでしょうか。

太田氏 欧米に比べてあまりうまく使いこなせていないように思います。法律や弁護士が基本的なインフラとして使えるということを十分理解している日本企業は少ないと思います。法律をうまく使いつつ戦って、新たな価値を見いだすという感覚が外国勢に比べると弱いといえます。とくに欧米や中国の企業はこの点、非常に積極的だと思います。

―― 太田弁護士の専門の一つであるアクティビストファンドへの対応ですが、最近はどのような状況でしょうか

太田氏 世界的にはアクティビストファンドは活動を活発化させる局面にあります。世界的に金融緩和が続いてきた結果、「カネ余り」の状態が起きているからです。日本では2000年ごろからスティールパートナーズや村上ファンドなどが現れて、リーマン・ショック前までは、企業がため込んでいる資金を株主のために還元するよう求める活動が中心でした。リーマン・ショック後には状況が変化し、特に米国のアクティビストファンドは企業に「選択と集中」を迫って、企業の中核事業に経営資源を集中するように求める傾向が強まっています。

 企業価値の最大化や持続的な成長につながるような提案なら企業として受け入れる意味は十分ありますが、一方で、非常に短期的な利益ばかりを追求して、単なる株主還元を求めるだけのアクティビストファンドが依然として存在しているのも確かです。そうした動きにストップをかけ、企業を総合的に支援するのはビジネス・ローヤーの役割だと思います。

―― 今の時代、企業や企業弁護士に求められるものとは何でしょうか

太田氏 企業弁護士はあくまで黒子であることは確かですが、企業からは参謀的な役割が求められていると思います。すごく格好良く表現すると「軍師」のようなイメージでしょうか。

中村氏 逆に企業の側も企業弁護士の力を借りて何ができるのかをもっと戦略的に考える必要があると思います。ごく一部を除いて、必要なコストをかけて弁護士とともに企業戦略を考えている企業は実はあまり多くないのではないかという印象を受けます。私の取材不足かもしれませんが。

太田氏 海外の企業は法律の中で何をやっていけないのかではなく、法律の中で何が最大限できるかを考えます。日本企業と発想が逆で、リーガルを戦略的に活用できる「武器」としても考えるか、コンプライアンス的に考えるかでだいぶ違ってきます。

―― ありがとうございました。

  
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