キッチンの窓から満天の星を眺めながら深更まで静かに語り合っていたら悠久の世界が少し見えたような気がした。
この一帯はスコットランドと同様に泥炭湿地帯。雨水が泥炭の地層を通って川水となるため川水は黒い。
米軍関係者のジム・ブライアン
5月1日 朝から雨である。2時頃になると次第に雨が激しくなり空も暗くなる。とぼとぼ歩いていると後方から人影が近づいてきた。40歳くらいの大柄の白人男性である。挨拶するとアメリカ人でジム・ブライアンと名乗った。
ドイツに留学して建築を学んでから在ドイツ米軍基地の建築設計をしており在独20年とのこと。基地の施設は当然機密保持が大前提なので米国籍の彼のような専門家にとっては好待遇で安定したポジションのようだ。
在独米軍軍属のジム・ブライアン
一カ月の休暇を取りミュンヘンから歩いてきたと。今回は一カ月間歩けるだけ歩いて、来年の休暇でサンチアゴまで残りの行程を歩いて巡礼を成就すると。毎日40km以上歩いていると。ジムと話しながら同行することにした。190cm以上の長身であり大股でぬかるみを歩いていく彼に歩調を合わせると息が弾むが無人の荒野を独行するより精神的にはずっと楽である。
彼は独身であるが一緒に暮らしているドイツ人のガールフレンドがいるという。彼女は仕事があるので同行できないが彼女もジョンの巡礼を応援してくれていると嬉しそうに話した。外見より素朴な男だ。
海抜1200mくらいの高原なので晴れても肌寒い
⇒第4回へ続く
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