2024年4月25日(木)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月25日

日本経済にとっての打撃は?

 欧州経済がそれほど落ち込まないとすれば、世界経済全体としても打撃は小さいでしょう。世界同時不況といった事態にはならないと考えられます。

 日本経済にとっての打撃は、さらに小さいでしょう。欧州と日本は、地理的に遠いですし、歴史的な経緯もそれほど親密ではありません。産業構造が似ていることから、得意な産業が似通っていることもあり、輸出入取引は、それほど活発では無いのです。リーマン・ショックとの比較で言えば、日米経済関係と比べて日欧経済関係は希薄なので、万が一欧州経済が混乱しても、日本経済への影響は軽微であると言えるでしょう。

 さらに重要なことは、ドル安円高の可能性が小さいことです。今回、欧州の混乱を見越して、「安全通貨」である円が買われ、数円程度のドル安円高にはなりました。しかし、リーマン・ショック時のドル安円高は、遥かに大幅なものでした。それは、米国が金融緩和をして、日米の金利差が縮小したからです。

 リーマン・ショックの際は、米国の景気が悪化し、米国が金融を緩和しました。それにより、日米金利差が縮小したため、日本円をドルに換えて米国債を買おうという投資家が激減したのです。

 加えて、当時は文字通り円が「安全資産」として買われたのです。昨今の「円が安全資産として買われた」という解説は意味がよく分かりませんが、当時は米国も欧州も経済も金融機関も疲弊していて、日本が相対的に元気だったから、文字通り安全資産である円が買われた、という事だったわけです。

 今回は、米国経済が比較的堅調な事から、米国が利下げをする可能性は小さいでしょう。市場が予想する米国の利上げタイミングが後ずれする事はあるでしょうが、その程度の話です。

 一方で日本政府は、英国のEU離脱が日本経済に及ぼしかねない悪影響を緩和するため、財政出動をするかもしれません。そうなれば、ますます国内景気の落ち込みは回避されるでしょう。

 金融市場は、予想外のEU離脱となった事から大きく反応していますが、おそらく「大山鳴動して鼠一匹」ということになるでしょう。慌てず騒がず、落ち着いて景気動向を眺めるようにしたいものです。

 なお、英国に進出している日本企業の子会社にとっては困難も予想されますが、彼等は英国企業であり、日本の景気には直接関係ありません。せいぜい本国への配当金が減る程度でしょうから、本稿では海外子会社の事は考慮してありません。当事者にとっては深刻な問題でしょうが、本稿はあくまで日本の景気や経済成長などへの影響を論じたものですので、分けて考えた、というわけです。

  
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