2024年12月20日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月25日

 深刻な問題は、外国から借金が返済出来なくなる可能性です。ユーロ圏の経常収支赤字国は、経常収支の赤字分だけ毎年外国から借金しているわけです。現在は自国通貨でもあるユーロで借りているので、貸し手もそれほどリスクを感じていませんが、ユーロ圏を離脱して自国通貨を使いはじめると、その部分が「外貨建ての借金」となるわけです。経常収支赤字国が巨額の外貨を外国から借りている状態は、貸し手から見ると不安に感じるため、借金の返済を一気に迫られる可能性もあるのです。そうなると、借金を返す当てがありませんから、たちまち資金繰りに窮することになりかねないのです。

 現存する債務の問題を何とか切り抜けたとしても、経常収支が赤字だという事は、自国通貨を外貨に換えて輸入品を買う必要がありますから、自国通貨と比べて外貨が高くなっていきます。そうなると、輸入物価が次第に上昇していきます。恒常的なインフレに悩むことになりかねないのです。

 一方、経常収支が黒字の国がユーロ圏を抜けると、今度は自国通貨が高くなり、輸出が困難になるリスクがあります。そこで、経常収支黒字国もユーロ圏から抜けたくないと考えるわけです。

リーマン・ショックとの比較で言えば……

 リーマン・ショックは、住宅バブルが崩壊して、不良債権が大量に発生し、それが原因でリーマン・ブラザーズが破産し、他の多くの金融機関も不良債権問題に苦しんだわけです。

 しかし今回は、バブルが崩壊したわけでもなく、誰かが破産したわけでもありません。単に英国企業の輸出が難しくなるかもしれない、といった程度の話です。そうであれば、国際金融市場での資金の貸借が滞って、金融仲介機能が麻痺する、といった可能性は低いでしょう。

 万が一、ユーロやポンドの市場が麻痺したとしても、基軸通貨であるドルの市場がしっかりしていれば、国際的な資金決済が滞ることも考えにくいでしょう。


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