2024年12月20日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月25日

 個別企業にとっては、深刻な影響があるかも知れません。たとえば英国から欧州大陸に輸出する際に関税がかかる事になりますから、欧州大陸の輸入者が「それなら欧州大陸域内から買おう」と考えるとすれば、英国の輸出企業は深刻な打撃となるかもしれません。しかし一方で、英国の消費者が欧州大陸からの輸入品を買わずに英国産品を買うようになるので、英国経済への打撃は全体でみると限定的でしょう。

 英国企業の輸出が本当に難しくなるのかさえ、疑問です。今次離脱を受けて、英国の通貨が安くなれば、英国の輸出競争力はむしろ増すかも知れないのです。

EU崩壊はあり得ない

 英国がEUを離脱すると、次々と離脱する国が出て来て、EUそのものが崩壊しかねない、と心配する人もいます。EU各国とも、EUに参加している事のメリットとデメリットを感じているわけですから、英国と同様にデメリットを感じる人々が多数派になる可能性もある、というわけです。

 大英帝国時代の誇りにしがみついて孤高を保とうとする英国と、欧州諸国は歴史的な事情が違う、といった事もあるようですが、筆者が重視しているのは、EUではなくユーロ圏から出る事の難しさです。

 つまり、仮にユーロ圏ではないEU諸国が英国に追随して離脱する事があったとしても、ユーロ圏諸国はユーロ圏から抜けられず、従ってEUからも抜けられない、と考えるわけです。

 ユーロという各国共通の通貨を用いている国が、自国だけの通貨を持とうとするのは、手続き的にも事務的にも大変ですが、それ以上に経常収支が赤字の国にとっては深刻な問題を抱えることになります。


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