この言葉を聞いたO君は、走りながら、思わず大泣きしてしまったそうです。深い信頼関係がなければ、絶対に出てくる言葉ではありません。凄味(すごみ)ある、そして本当に優しい言葉です。
ランナー:「そんなにきれいなの。見てみたいわぁ」
伴走者:「今度はきれいなせせらぎよ! 素晴らしい水の音が聞こえるでしょう!? あと100メートルくらいくだると大きく右に曲がるからね」
ランナー:「はーい了解」
このときO君の頭のなかを、あの渡辺蔚君の言葉が駆け巡ったそうです。
「伴走はやってみたら、50cmのロープを通して、相手の体温やぬくもりとか、心臓の鼓動とかが伝わって来るような気がして、とても楽しかった。私がネーミングしたんですけど、盲人マラソン協会の会報のタイトルを『絆(きずな)』としています。50cmのロープが、見えない目と見える目をつなぐ心の絆、というつもりです」
女性ペアから元気をいっぱいにもらったO君は、それほど疲れることもなく無事ゴールできたそうです。
O君が帰り道、最寄り駅までのシャトルバスを待っていると、偶然その女性ペアに出会いました。「あなた方お二人のおかげで元気になって、初めて完走できました」とO君がお礼を言うと、ゴールタイムや上り道が辛かったことなど会話が弾みました。
「私たちはいつも制限時間ぎりぎりでゴールするのよ。この前100キロマラソンに出たときも30秒前だったわよね・・・」「私は先週、別のランナーの方とハーフマラソンを走ったんだけど・・・」「私たちもう60過ぎてるのにね・・・」ランナーと伴走者から次々発せられる言葉に、O君は唖然としたそうです。どこからみても二人は40代くらいにしか見えなかったからです。
ランナーと伴走の方、渡辺蔚君、そして「でも、あなた見えないのよね。本当に残念だわ」の言葉に感動してがんばったO君に、ペコペコです。
「市民マラソンはどこも参加者が爆発的に増えています。彼女たちのあの明るい表情を見れば、なぜ人気に火がついたかよくわかります」そう言ったO君は、少し複雑そうな表情になってこう続けました。
「ただ、マラソン人気には不景気も大いに関係していると思います。なにせ靴一個あれば始められるわけですから」
経済状況がどんどん厳しくなっていくこの世の中で、一人ひとりのビジネスパーソンが、どのような気持ちで生きていけば前向きに人生を歩んでいけるのか、一(イチ)経理・財務マンとして38年間たたき上げてきた私の経験から何かお役に立てることはないかと考え、このコラムを書き始めて、本当に良かったと思います。
来年もまだまだ厳しい情勢は続くでしょう。私も一生懸命、私の考えをみなさんにお伝えしていきたいと思います。読者の皆様、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
■読者のみなさまへ
筆者自身が述べておりますように、このコラムは、読者の方々からいただいた情報のおかげで、当初は想定していなかった広がりを見せております。どのようなことでも結構ですので、ご感想などございましたら、こちらからお送りいただければ幸甚です。 (編集部)
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