また、試合で使用するクラッチのグリップや底の部分、またクラッチの長さとパフォーマンスの関係にも注意を払って選手にアドバイスを送っている。
阿部眞一氏によれば、「山本五十六さんの言葉に、『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』というのがありますね、野口君はまさにそれかなと思っています。
彼の良いところは選手と対等にプレーすることにあるんです。選手といっしょにやることによって、気づいたことを練習に取り入れてアドバイスを送る。できれば褒める。だから選手は伸びていく。そういった良い循環がチームにできてきていると感じています」と野口の働きを評している。
ヘッドコーチとしての夢
最後に「FCアウボラーダ」のヘッドコーチとしての夢を聞いた。
ヘッドコーチという立場で良い結果を出し続けたいと思っています。でもそれは優勝するというだけではないんです。大切なことは、選手たちとコミュニケーションを図りながら、楽しく蹴ってくれるメニューを作ることであり、選手が考えたアイデアを取り入れたり、新しいことにチャレンジするような練習にしたいということです。
現在チームには日本代表が5名いて国内最多です。だからチームの練習レベルが上がれば、日本代表のレベルアップにも良い意味で影響すると考えています。
もうひとつ大切なことがあって、それは小学4年生のチームメイト石井賢くんが、『将来は日本代表になりたい!』と言っているので、僕がそこへ連れて行ってあげたいんです。僕にとってもアンプティサッカーにとっても賢は宝物です。賢の夢、それは僕にとっても大きな夢です。
取材後記
上肢、下肢の切断障害を持った選手がプレーするアンプティサッカーと義肢装具士との相性は最高に良いはずだと考えていました。しかし、野口さんはチームメイトの義足を作ろうとはまったく考えていないようです。選手とコーチというシンプルな関係を保ちたいから、というのがその理由です。
平日は義肢装具士、休日はアップティサッカーチーム「FCアウボラーダ」のヘッドコーチに徹したいというのが野口さんの願いです。
ただ、アンプティサッカーに義肢装具士が関わっていることの意味は大きく、選手たちの会話には仕事に繋がる学びが溢れています。高い気持ちを維持するため、常に義足がすぐ近くにある環境に自分を置いておけることの意味は計り知れないとも語っていました。
<野口魁 主な経歴>
1991年 沖縄県浦添市出身
1996年〜はくつるフットボールクラブ
2004年〜創価中学校・サッカー部
2007年〜創価高等学校・バレーボール部
2010年〜国立障害者リハビリテーションセンター学院義肢装具学科
2013年〜有限会社 坂井製作所(http://sakai-po.sub.jp/index.htm)
2014年〜アンプティサッカーチーム・FCアウボラーダ(http://fc-alvorada.net/)
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