オバマ政権による北朝鮮マネー・ロンダリング(資金洗浄)懸念先指定の措置を評価しその強制実施を期待する論評です。論評は特に措置決定のタイミングを評価しています。論評の言う通り、今般の米国の措置は良いことです。
6月1日、米財務省は北朝鮮が核やミサイルの開発資金の不正な送金を続けていることや銀行に対してサイバー攻撃を掛けていることを指摘して、北朝鮮を法に基づくマネー・ロンダリング懸念先に指定、米金融システムへのアクセス拒否を含む金融取引を一段と厳しくする制裁措置を発表しました。これにより北朝鮮の銀行は米国の銀行との取引が禁止されるほか、北と取引を継続する米国以外の国の銀行は米国の金融システムから排除されることになります。財務省は声明で他国政府も同様の措置を講じるよう期待を示しました。
イランを核交渉に動かした要因として米国による金融措置の力は大きいものでした。また、2005~07年のバンコ・デルタ・アジア銀行制裁措置解除に向けた北朝鮮の執念を見れば、金融措置の潜在的インパクトは大きいです。しかし、イランの場合とは違い北朝鮮への効果は不確定だとの指摘もあります。第一は、同様の措置はイランの莫大な石油収入を止めるという大きな遮断効果を持ったが、北朝鮮への遮断効果は限られるとの点です。通貨偽造についても米国がその後100ドル紙幣の仕様を変更したため偽造ビジネスは相当程度できなくなりました。第二は、中国がどれほど協力するかということです。中国は既に今回措置を批判しています。
中朝は関係修復か
中朝関係に最近、関係修復とも受け取られうる動きがみられます。5月9日、習近平は金正恩に祝電を送って北朝鮮労働党委員長に推戴されたことを祝いました。さらに、6月1日、習近平は北京を訪問中の李洙墉朝鮮労働党副委員長と会談しました。約3年ぶりの北朝鮮要人との会談でした。その席上、習近平自ら中国が求める朝鮮半島の非核化を念押ししたと言われます。中国の朝鮮半島研究者の中からは「原子力発電などの核開発は進めるが、核実験は封印すると約束したのではないか」との観測が出ているといいます。他方、5月の党大会で金正恩は「責任ある核保有国」を宣言し、核保有国の既成事実化を狙っています。北はイランなどの例も入念に検討しているに違いありません。
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