2024年11月23日(土)

WEDGE REPORT

2016年7月28日

挙げ句の果てにはワシントン条約「違反」まで

 また、ヨーロッパウナギに至っては、09年から野生動物の国際取り引きを規制するワシントン条約の附属書Ⅱにも指定され、許可なしには取り引きが禁止されている。また、EUは域外との商取り引きを全面的に禁止している。

 だが、毎年外食店やスーパーでウナギを購入してDNA検査を行っている北里大学の吉永龍起准教授によると、今なおヨーロッパウナギを取り扱っている店があるという。EU域外国へ不法に出されたシラスが、香港を経由して、中国で養殖・加工され、日本へ輸入されているものとみられている。

 DNA検査を実施すると、ヨーロッパウナギであることがすぐに判明することなどから、昨年から急激にヨーロッパウナギを取り扱う店舗は減少したが、未だに日本国内で販売されている。

 ウナギの取材を始めると、次から次へと違法行為や不正、業界のコンプライアンス意識の低さなどが明らかになってくる。「今年も土用の丑の日がやってきました。おいしくウナギをいただきましょう」などと言っている場合ではない。

 そもそも「土用の丑の日」にウナギを食すようになったきっかけについては諸説あるが、江戸時代に平賀源内が知り合いのウナギ屋から依頼されて、閑散期である夏に売り上げを伸ばすためにつくったキャッチコピーという説がよく知られている。

 日本のシラス問屋、養鰻業者のみならず、絶滅危惧種を大量販売し続けるスーパーや外食店、資源問題には触れず土用の丑の日だからといって消費を煽るメディア、それぞれに責任はある。知らず知らずのうちにではあるが、残念ながら、消費者もこうした状況をつくりあげている一員である。

 もし、平賀源内がこの世にいれば、こうした「惨状」を知るにつけ、「土用の丑の日」のキャッチコピーを取り下げるかもしれない。

台湾、香港への現地取材についても触れているこちらの記事(「土用の丑の日」が引き起こすウナギ業界の「異常」)も合わせてご覧ください。

  
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◆Wedge2016年8月号より

 


 


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