他にも中年男性は、趣味もなく、孤独な人が多い。そこは会社員だろうが、自営業だろうが共通点としてあります。そういうことに若い時に気が付き、例えば高校・大学時代の友達を大切にしておくことも重要です。
――中年男性はどうして悩みを打ち明けられないのでしょうか?
田中:それは男らしさという規範に関係があると思いますね。古い規範だと「男は泣いてはいけない」「感情を表に出してはいけない」「我慢強くあるべき」とは幼少の頃から女子より強く言われてきた。そうした「男はこうであるべき」という規範が、男性の感情の吐露を妨げているのではないか。
他にも本書のタイトルのように「働きたくない」と結婚している男性が言い出した時、女性は受け止められないのではないかと。ですから、仕事を辞められないとなると抱え込むしかなく、その上に弱音を吐くのがルールとして禁じられているのが大きいかなと思いますね。
最近、僕が考えているのは、長時間労働も含め、男性は社会の中で雑に扱われているのではないかということです。もちろん、女性が社会の中で男性よりも下に扱われているという前提での話、です。
長時間労働は健康上の問題はもちろん、そもそも自分の人生の大部分を仕事に費やす上に、本人たちもそれが当たり前だと思ってしまっているところがある。また、体調が悪くても、多忙を理由に病院へ行かなかったりします。本来は、仕事よりも健康の方がはるかに大事なのに、それでも働こうとする。これは、社会が男性を雑に扱っているとも言えるし、逆に男性もそうした雑な扱いに慣れている、さらに男性自身が自らを雑に扱っているのではないでしょうか。
――長時間労働を改善するには、現役で働いている人たちがもっと意識していくことが大事でしょうか?
田中:労働基準法では、基本的に1日の就労時間は8時間、週40時間が原則で、それ以外の勤務は時間外労働と書かれています。この原則に立ち返り、今はイレギュラーな働き方をしていると認識してほしいですね。
――仕事に人生のほとんどを費やし、趣味など楽しみものがないという中で定年を迎える人も多いですよね。
田中:定年を迎えた男性へのインタビュー調査の結果、定年後の一番の悩みは喪失感。約40年間、仕事ばかりの生活だったんですから、多くの人は心にポッカリと穴があきますよね。ただ、喪失感というのは時間と共に癒えていきますが、根本的な問題として残るのは暇な時間です。