WEDGE REPORT

2016年8月25日

»著者プロフィール
閉じる

片倉佳史 (かたくら・よしふみ)

台湾在住作家

1969年神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、ベネッセに入社。97年に渡台し現在に至る。日本統治時代の遺構や歴史秘話の発掘に勤しむ。台湾関連の著者多数。

 台湾には「為善不欲人知」という言葉がある。「本当の善行は人に知られない」という意味である。張氏は生前、自らの力をひけらかすことはなく、義援金についても、自ら触れまわるようなことは一切なかったという。

 こういった観念は日本人が持ち込んだもので、これが台湾人生来の勤勉実直な精神性と合致し、浸透したとも言える。戦後に入り込んできた中国的価値観によって台湾の社会は変容を強いられたが、戦後生まれの世代にもこういった精神性は受け継がれている。

 勤勉な気質や相互扶助の精神、自然体を貫く人生観など、台湾人の民族性というべきものの中に、日本が遺していったものが垣間見られることは少なくない。

新政権発足とともに日台関係も次世代へ

蔡英文新総統(写真・YOSHIFUMI KATAKURA)

 今年5月20日、蔡英文総統率いる新政権が誕生した。1月16日の総統選挙で若者たちの圧倒的な支持を得て政権奪還を遂げたのは記憶に新しい。中国は選挙前から様々な形で牽制を仕掛け、特に中国人観光客が対前年比で3割減という状況は観光業者を中心に、大きな影響が出てきている。

パーティーで屈託ない笑顔をみせる張栄発氏(YOSHINOBU IKEMOTO)

 しかし、こういった動きの中、台湾では今後を危惧する声とともに、いかにして台湾が尊厳を守り、国際社会に食い込んでいくかという議論も盛んになっている。当然ながら、隣国である日本とのかかわりも深い。

 これまで日台の絆を紡いできた日本語世代が数を減らしていく中、学生が自主的に勉強会を催したり、古老を囲んで往年の話を聞く会を開いたりするなど台湾の若者たちの間では先輩たちから何を学び、受け継いでいくかを真剣に考える動きが活発化している。

 日本語世代が温めてきた「台湾人として生きる強い意志」とは何か。それを肌で感じ、探求しようとする若者たちのまなざしは熱い。台湾の地に生きる「誇り」は今後、どのように発展していくのか。日本とも決して無縁ではない新しい台湾人の存在は興味の尽きないところである。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2016年8月号より

 

関連記事

新着記事

»もっと見る