2022年12月5日(月)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年8月28日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

候補者の失言と「ブレンド」

 選挙戦の流れを変えたトランプ候補の米軍人遺族に関する失言に対して、政治コンサルタントのマナフォート氏は、即座に効果的な対策を打つことができませんでした。巨額資金の受領疑惑及びトランプ候補の自己愛的人格に加えて、同氏の対応のスキル不足も辞任の要因として見逃せません。

 候補者の失言を正当化すると、逆効果になる場合があります。では、どのようにして対応すれば良いのでしょうか。

 選挙手法の1つに、「ブレンド」があります。種類や品質の異なったコーヒー豆を混合することにより、薄めていくやり方です。候補者は、一旦、自分の発言に対して後悔の表明ないし謝罪を行います。その後で、相手候補は自分が犯したミスに対して謝罪をしないと攻撃し、「ブレンド」をするのです。トランプ候補がマナフォート氏に代わり、選対本部長に昇格させたケリアン・コンウェイ氏は正にこの選挙手法で危機を乗り越えようとしています。その反面、マナフォート氏は大物政治コンサルタントと言われながらも、コンサルタントしての役割を果たせなかったのです。

異変する激戦州とスケジュールミス

 本来ならば、オハイオ州、ペンシルベニア州、バージニア州、ノースカロライナ州、フロリダ州及びコロラド州は激戦州ですが、オハイオ州とノースカロライナ州を除き、クリントン候補がトランプ候補を約10ポイント引き離しています。従来の激戦州が、激戦州ではなくなっているのです。

 ロアノーク・カレッジの世論調査によれば、バージニア州ではクリントン候補がトランプ候補を16ポイントもリードしています。クイニピアック大学の調査では、コロラド州でクリントン候補はトランプ候補を10ポイント引き離しました。

 その結果、クリントン陣営は、バージニア州並びにコロラド州におけるテレビ広告を一時停止し、新たな激戦州となっているジョージア州及びアリゾナ州にスタッフや選挙資金をつぎ込んでいます。ジョージア州では、共和党が1996年から5回連続で勝利を収めています。一方、アリゾナ州では、1952年から2012年までの大統領選挙において民主党が勝利したのは、1996年のわずか1回のみです。共和党が圧倒的に強い両州において、トランプ候補のリードは5ポイント以下なのです。その背景には、ヒスパニック系やアジア系など非白人の人口増加が影響を与えているとみられています。

 激戦州で苦戦を強いられているトランプ陣営は、投票日まで約13週間になった段階で、東部コネチカット州で集会を開いたのです。コネチカット州は、1992年から6回連続して民主党が勝利を収めており、前回の米大統領選挙でオバマ大統領がミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事を17ポイントも差をつけて破った州です。

 トランプ陣営は、従来の激戦州及び苦戦している南部の州にあくまでも焦点を当てるべきなのです。コネチカット州での集会の開催は、正に同陣営が迷走している証だったのです。
 

  
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