私たちは、その派遣会社と団体交渉をしました。担当者の上司(部長)は、その場ではじめて、これまでのいきさつを知らされたのです。部長は担当者だけでなく、派遣スタッフからも話を聞くべきでした。一方の話だけをもとに、「あの派遣スタッフは使えない」とダメ出しをするから、こじれるのです。いじめやパワハラが減らない理由の1つは、ここにあります。
機能しない「なんでも相談室」
最近、労使紛争が増えていることもあり、社内に「なんでも相談室」などを設ける会社が増えてきました。人事部の社員などが、いじめやパワハラ、セクハラなどの相談を受けるのだそうです。大企業でも相談に現れる人は、ほとんどいないようです。それは、当然でしょう。社長や役員などが、全社員に公平に接することを宣言していないのですから。
たとえば、非管理職がいじめをされていたとします。そこで、いじめをする管理職の側と、その非管理職の言い分を丁寧に聞いて、公平に判断し、対処しますか? ほとんどの会社では、そんなことをしないでしょう。管理職の言い分だけをもとに判断するのではないでしょうか。まして、いじめをするのが本部長や執行役員になると、その言い分を丸飲みにしているでしょう。
これでは、信頼関係ができるわけがありません。こんな中で、「なんでも相談室」を設けたところで、機能はしません。
もう1つの事例は、ビルメンテナンスの作業員として、男性がビルの管理をしていたときのことです。男性が間違って、エレベーターをわずかの間、止めってしまったのです。乗客はほとんどいなかったようです。
男性は解雇となり、我々のもとへ相談に来ました。話を聞くと、作業のマニュアルはなく、前任者からの引継ぎもほとんどされていないのです。教育訓練も十分とは言い難いのです。