2022年10月1日(土)

WEDGE REPORT

2016年9月21日

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余裕のプーチン

 停戦が事実上崩壊した現時の中で、最大の勝者はプーチン大統領だ。「シリアの状況を思うがままに操っているかのようだ。軍事介入で政府軍を優位にし、今やシリアで主導権を握っているのはプーチンだ。彼抜きでは何も語れない」(ベイルート筋)。

 この見方のようにロシアにとって戦闘の継続はむしろ都合のいいことかもしれない。軍事的には少ない戦費で戦況をコントロールし、当初懸念されたようにアフガニスタン介入のような泥沼にはまるような状況ではない。

 新型の爆撃機や巡航ミサイルなど近代化した兵器の性能をシリアを実験場にして世界に誇示しており、兵器の売却という商売の面でも抜かりなく進めている。政治的には、クリミア併合、ウクライナ問題で欧米から制裁を受けて追い詰められていた劣勢をシリア介入でひっくり返してしまった。

 アサド大統領の追放を主張してきたオバマ政権はもはや“アサド存続”を黙認、シリア政策は次期大統領に委ねられることになったし、仮にプーチン氏を評価している共和党のトランプ候補が大統領にでもなれば、同氏にとって状況はさらに好転することになるだろう。

 またアサド追放の急先鋒だったトルコのエルドアン大統領はロシア軍機撃墜問題でプーチン氏に頭を下げ、米国同様、アサド存続にカジを切った。プーチン氏はこうしたシリアにおける成果も追い風にして、18日のロシア下院選では圧勝を決め、国内の権力基盤を盤石なものにした。

 しかし逆に言えば、プーチン大統領にはシリアの内戦を何としても終結させ、ISなど過激派を一掃するという意欲は薄いと言える。空爆など“適度な介入”を維持はしても、複雑な内戦のドツボに入り込む気は毛頭ない。内戦の終焉は全く見えなくなった。

  
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(了)

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