ロールスロイスのコンセプト「立ち上がり、そのままレッドカーペットへ」
その自動運転をさらに進めたのがロールスロイスのコンセプトだ。実はこの車はロールスロイスが初めて発表するコンセプトカーでもある。ロールスのネクストビジョンにはそもそも「運転席」がない。バーチャル運転手、「エリノア」が搭載されており、オーナーはただ後部座席に座って行き先を告げるだけで良い。
またこの車は天井とドアが一体化して横開き、という設定だ。つまり立ったまま、かがまずに車に乗り込める。降りるときも同様だ。「立ち上がり、そのままレッドカーペットへ」というのが基本的なコンセプトなのだという。ラゲッジスペースが座席の前の部分に設けられるなど、セレブ生活に便利な機能も搭載されている。
BMWグループではこれらのコンセプトが実現するのは「2、30年先」だと説明する。オートショーなどで発表されるコンセプトカーは数年後の市販を目的とするが、NEXT 100では文字通り100年先にはどんな車が存在するのかを真剣に考えたものが提示されている。
「現在様々なメーカーが自動運転の開発を進めており、数年後には実用化の声もある。しかしミニやロールスのコンセプトのような完全自動運転モードを持つ車が実際に市街地を走れるようになるのはまだまだ時間がかかる。自動運転の実現にはかなり高速のインターネットが世界中を網羅する必要があるためだ」という。エンジンも同様で、全てのコンセプトは「ゼロ・エミッション」だが、数十年先にEVが中心となっているのか、あるいは水素エンジンなのか、燃料電池なのか、全く別のものなのか、現時点ではまだ分からない。しかしあらゆる可能性に対応できるコンセプトとして考えられたのが、今回の4つのモデルなのだ。
NEXT 100の会場では現在の4つのブランドの最新モデルの展示、バイクをVRで楽しむイベント、EVであるi3、i8などの試乗会も行われていた。しかしBMWが今回のイベントで提言したかったのは「2050年には地球の人口は100億人に達し、うち75%が都市部で生活するようになる。そんな時代に人々が求め、環境にも優しく、便利で快適で、なおかつ車を所有する楽しさも与えられる」のはどんな車か、という点だろう。オートショーとは一味違う、少し先を見据えたBMWのアイデアにはメーカーとしての責任感とモノ作りへの真剣な姿勢が感じられた。
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