だからこそ、9月になると、習主席の腹心である天津市の黄興国党委員会書記代理が突如失脚させられ、同じ時期に李首相の外交的活躍がクローズアップされた。そして9月21日から人民日報は、李首相の後ろ盾である共産党元総書記、胡錦濤氏の「文選」の刊行を記念して、胡氏を褒めたたえる文章を連続3日間、1面で掲載した。
つまり、李首相の「外交復権」の背後には、今まで習主席との権力闘争においてやや劣勢に立たされた共産主義青年団派の勢力が、例の「北戴河会議」を経て再び勢いを巻き返してきたことがあったのではないかと思われる。10月27日に閉幕した前述の6中全会で発表されたコミュニケが、習近平氏への権力集中に対する警戒と牽制を露わにしたことの背後には、まさに習氏と対立している李首相と共青団派勢力の強い抵抗があったのであろう。
もちろんそうは言っても、李首相たちは結局、習氏を「核心」と位置づけることを阻止できなかったから、当面の政権内の政局においては、習氏勢力は依然として優位を占めていると言ってよい。だが来年秋の十九回党大会に向けて、この二大勢力は今後、より激しい権力闘争を展開していくこととなるだろう。
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