この戦術の「マイナス点」は、「休会任命を受けた人」は議会の現任期中だけ職務を担う資格があるということだ。つまり、来年1月半ばごろまでの期限付きである。その段階でオバマ大統領が「休会任命を受けた人」に職務を続けてほしいと望むのであれば、再び真正面から上院承認を得ようとしなければならない。
さあ、読者の皆さんのあくび声が聞こえていますよ! けれど、ここであくびするのは間違いなんです!
というのも、オバマ大統領の行動の重要性は、大統領が上院の共和党議員に対し、まったくもって非協力的な共和党の姿勢をもう容認しないと明言したところにあるからだ。そして、大統領はそうした発言を行動で裏づけている。それも、共和党がどれだけ腹を立てようが、すぐには打ち消せない行動で。
ここに、民主党寄りの観測筋に大きな喜びをもたらした実に巧みな戦術がある。上院が77人に上る候補者の承認を遅らせているにもかかわらず――多くの人は平均して7カ月も承認待ちが続いている(本当に!)――、大統領は休会任命を15人にとどめたことだ。
15人という数字は上院の共和党議員に「明確なシグナル」を発し、共和党が声高に異論を唱えられないようにした。というのは、15人というのは、ジョージ・ブッシュ前大統領が就任1期目の同じ時期に休会任命したのと全く同じ数字だからだ。当時「気難しかった」のは民主党であり、ブッシュ大統領も休会任命に頼らざるを得なかったのである。
15人の休会任命が天才的である理由は、以下の点にある。オバマ大統領は、決して彼を軽んじてはならないというメッセージを発しながら、そのために核兵器のように破壊的な手段を使うことはしなかった。オバマ大統領はバランス感覚を発揮し、共和党出身の大統領が同じ問題に直面した時の対応と見事釣り合うようバランスを取ったのだ。
新生オバマの深謀遠慮
ここで一連の出来事を振り返ってみよう。医療改革法案の可決、イスラエルとの対峙、ロシア政府との間で結んだ核合意、そしてオバマ大統領が国際金融および国際貿易にとって必要だと考える政権重要ポストの強制的な任命――。
すべてを足し合わせて得られる結果は何だろうか? これは「新しい」オバマなのか、それとも、大統領がただ単に次第にコツを覚え、誰を頼りにできるか(そして誰を頼りにできないか!)に気づき、今では決断力をもって行動することを恐れなくなっただけのことなのだろうか?
我々は、先に法として成立した医療改革法案という明白な例外を除き、大統領が取ったすべての行動は、暗に共和党に和解を申し出るものだったと見ている。大統領が望む将来展望がはっきり示された今、今度は「野党」が自分たちの今後の対応に恩恵(あるいはリスク)があるかどうかを決めなければならないからだ。
さて、オバマ大統領の意思決定が実際に適用される場面について触れて、今月のコラムをまとめることにしよう。
早ければ4月15日、予定通りであれば、胡主席が核安保サミットに出席し終えた2日後に重大な局面が訪れる。この日、米財務省は半期ごとにまとめる「為替レートが適正水準から乖離した状態(ミスアラインメント)にある通貨に関する議会報告」を公表する予定になっているのだ。