具体的に言えば、オバマ大統領が決断を迫られるのは、米財務省が今年、中国人民元が国策によって人為的に割安に抑えられていること、ひいては人民元が「ミスアラインメント」状態にあることを正式に「認定」するかどうかだ。
昨年、オバマ大統領とティム・ガイトナー財務長官は公然と、人民元のドル・ペッグ(元相場とドル相場を連動させる固定相場制)のせいで元相場は明らかに「ミスアラインメント」状態にあるという批判を繰り返した。同じ批判は今年に入ってからも続いている。
であれば、何も問題はない、さっさと「認定」すればいいだけだろう?
…そう思われるかもしれないが、実は、そうじゃないかもしれない。WEDGE Infinityの読者ならご承知の通り、中国の金融政策に関する問題は、中国の国家安全保障の重大な側面であり、同国の政治主権の根幹にかかわる問題だ。日本の金融政策や米国のそれが重要であるのと何ら変わらない。
このため当然の如く、中国指導者層は過去数年間、人民元の「ドル・ペッグ」に対するブッシュ時代の“説教”や、今オバマ政権が同じスローガンを唱え続けていることに対して、非常に強い反応を示してきた。
オバマ大統領の対中政策について一貫している点があるとすれば、それはどんな問題であれ、個別の問題が米中関係全体を危険にさらすことを決して容認しなかったことだ。オバマ大統領はイランや北朝鮮、気候変動といった「より大きな問題」について中国政府と協力し続けることを固く決意し、それを繰り返し実践してきた。
このため、胡主席の訪米が2週間後に迫る中、オバマ大統領は入植に関するネタニヤフ首相の決断と同じような決断を下さなくてはならない。もしオバマ大統領が、胡主席が帰国した2日後に米財務省が中国を為替操作国と「認定」することを許したら、これはネタニヤフ首相がバイデン副大統領に対して放った侮辱と同じ類の行為にならないか?
さて、読者の皆さんは、“新生かつタフなオバマ”はどうすると思われるだろうか。
我々の予想はこうだ。オバマ大統領は米財務省が中国を為替操作国と「認定」することを認めず、その代わりに議会報告の提出を遅らせるだろう。それも、5月に予定されている米中首脳会談の後まで先送りする可能性が大きい、と我々は考えている。
最後の締めくくりとして述べておくと、「新しい」オバマは確かにタフだが、今でもやはり賢明なのである。では来月は、我々の予想が正しかったかどうか見てみよう!
*写真はいずれもWhite Houseより
*次回更新予定日は、4月30日(金)です。
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