ただ、実際には就学援助に関し、学校長の所見により認められるケースもあるにはありますが、どの程度実施されているかは自治体次第です。
また、特に保護者が経済的な問題を抱えている自営業者の場合、就学援助を受けようにも課税証明を出せないケースもあります。課税証明を取得するために自治体に申告すると、国民健康保険料などの督促があるのではないかと恐れているためです。
給食費以外では、修学旅行費の未納が結構あることが知られています。ただ、給食費と違いデータがないために、全体像の把握は出来ていません。しかし、旅行費が払えないため修学旅行を断念しているケースは少なくないようです。
――生活保護や就学援助は地域差があるのでしょうか?
鳫:あります。例えば、小さな町や村は小さいコミュニティですから、外聞を気にして生活保護申請をためらいがちです。就学援助すらも難しいと聞きます。
例えば被災した石巻市では、被災前、就学援助を受けている割合が13%で、給食費の未納も200件ほどあったそうです。しかし、被災後、被災児童生徒就学援助事業が開始されると、受給割合が40%まで増え、未納は100件以下に下がったそうです。被災前は、それだけ就学援助を受けるハードルが高かったということです。
しかし、こうした援助を受けるハードルが高い小さい町や村をはじめ、最近になって全ての子どもに対し給食の無償化を導入する自治体が増えています。その数は全国で約2割にものぼります。誰かを特別に支援するのが難しい小さな町や村を中心に、子育て支援の枠組みで、給食費や保育料の無償化が少しずつ進んでいます。
――元々、給食制度というのはどういった考えからスタートしているのでしょうか?
鳫:明治以降の学校給食は「貧困児や欠食児童救済」を目的に始まり、そうした児童に関しては無料でした。しかし貧しい家庭の子を選別するのは非常に難しく、やがて全ての子どもの栄養改善を目的とした給食が普及すると保護者負担が始まり、普遍的給食として設けられました。
――鳫先生は給食費未納を防ぐためには、どのような制度を構築すべきだとお考えですか?
鳫:そもそも義務教育は無償と憲法でうたわれていますから、給食を全ての児童に無償で提供すべきだと考えています。
では、その予算をどうするか。例えば、児童手当から給食費を一律に天引きすれば、未納は防げますが、その分現金収入が減りますから、低所得家庭にとっては厳しい結果になります。また、給食費を税金から投入すれば反対する人もいると思います。しかし、給食にかかる費用のうち、人件費や施設設備費は既に税金で賄われ、食材費のみが保護者負担となっています。