2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月30日

 米国では専門家の間で北朝鮮に対する軍事攻撃の議論が種々行われているようです。例えば、1月2日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙社説は、金正恩が年頭の辞で述べたICBMの発射実験をすればそのミサイルを迎撃、破壊すべきだと主張しています。

 北の核は第一撃能力しかなく、有事の際に北はできるだけ早期にそれを発射しようとするだろうという意味で、不安定化要因となる能力です。慎重さが必要だとする筆者の思考は妥当です。
北の核・ミサイル開発への対処方法について大方の考えを纏めれば、次の4点のようになります。

4つの対処法

(1)外交による解決を強化する。当面制裁の強化が中心となる。特に金融制裁、さらに米国による第三者制裁が必要となる。トランプ政権の米中関係の動向が、中国が協力するかどうかに大きく影響する。米中関係が緊張すれば中国は協力しないだろう。あるいは、何らかの米中取引ができれば協力するだろうが、かといって、悪い取引であってはならない。

(2)ミサイル防衛の強化と拡大抑止を含めた同盟の管理強化を図っていく。しかし、抑止力を幾ら強化しても北朝鮮の核・ミサイル開発自体を止めることにはならない。

(3)核・ミサイル施設への軍事攻撃をすべきとの議論も米では行われている。しかしそれは北との全面戦争になる危険がある。またエスカレーション・ドミナンスを北が持つことになる危険もある。

(4)非軍事的手段によりレジームの変革を起こす。「脱北の勧め」もその一つになりうる。

 上記のうち、(1)と(2)を中心に考えていくということになるでしょう。時間は北に有利に働いています。当面、トランプ新政権の対北朝鮮政策がカギとなります。金正恩はトランプの手法(予測不可能性など)に一定の恐怖を感じているに違いありません。同時に何らかの大きな取引が可能だと一抹の期待を持っているかもしれません。トランプの政策は同盟国にとっても大きな影響を与えます。対北政策を重視することになればそれ自体は良いことですが、トランプの関心が核不拡散やアジアの安全保障といった観点ではなく、専ら米国に向けられるICBMだけに偏重することになれば、同盟管理上問題が生じかねません。上記論評にはその萌芽が窺われます。この点は要注意であり、日米の緊密な対話連携が不可欠です。また、目下政治外交力を大きく喪失している韓国との連携の維持も緊要です。

  
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