――今回の宣誓問題は、これからどのように香港に影響していくと思われますか?
周庭:宣誓問題はきっかけに過ぎません。現在もネイサン・ローを含めて4人の司法審査が行われています。また今後、香港版「治安維持法」である「基本法23条」が成立することが懸念されています。これは中国の法律に存在する「国家転覆罪」や「反逆罪」、「国家機密漏洩罪」などの導入となります。これは立派な人権侵害でもあり、法律を利用して反対意見を弾圧する手段でもあります。ただ本当に怖いのは「基本法23条」自体ではなく、治安維持法がバラバラな形で法律に組み込まれることです。元律政司司長の梁愛詩(エルシー・リョウ)は以前「国家安全条例の制定にはこだわらない。違う法律で23条を噛み砕いて実現すれば良いだけなのだから」と発言しました。
今回の宣誓問題を言い換えれば「宣誓における23条」として考えることもできます。建制(親中)派の宣誓にも、読み間違えや、内容に不備があることもあります。その人達は見逃して貰えたが、政治立場が違う民主派議員は司法審査をかけられたわけです。(中央政府に)反対する人を「悪」とみなし叩く、それが本質だと思います。
更にしばらく前に「インターネット23条」と揶揄されて著作権法の改正案がありました。法案の内容は、アニメやドラマのシーンを引用する際、とても細かく引用元の表記が義務付けられるというものでした。また、シーンを真似て作成する風刺画などは禁止になるなど、実質的な言論制限だと批判されていました。この法案は最終的に否決となりましたが、「23条を噛み砕いた」ものは続々と出てきています。
「香港衆志」は本土派なのか?
――今アグネスさんが所属している学生団代「香港衆志」を「本土派政党」として捉えている一部の声もありますが、それは正しいのでしょうか?位置づけを教えてください。
周庭:まず私たちは本土派ではありません。本土派と言われる政党や組織の中でも様々な主張や、意見の違いがあります。一部の本土派では排外的な発言や思想が見られ、特に中国人や中国からの移民に対しての拒否反応が強く見られます。中国人旅行者によるストレスが大きくなっている今、主張や政策の矛先を中国自体に向けているのが特徴的です。
また最終的に目指している理念も異なっておりまして、一部の本土派では「香港独立」や「民族自決」を求めています。以前私はラジオ番組でそのような主張を持っている組織と討論したことがありますが、そもそも「香港民族」とはどういうものなのかを聞いてもはっきりした回答をもらえませんでした。その上、彼らが目標としているのは香港の「独立」と言う主権状態です。だが独立したことで、必ずしも「民主的」になったとは言えません。
私たちが求めているのは「民主自決」であって、定まった主権状態を求めるのではありません。立法会などを通して民主主義を実現し、自ら香港の未来を決めることを目指しています。