オバマ前大統領に対するトランプ米大統領の非難が激烈なものになってきた。トランプ氏は週末の4日、フロリダ州の別荘からのツイートでオバマ氏が選挙直前、トランプタワーを盗聴していたとして、「悪いむかつくヤツ」と罵倒した。この怒りの根底にはオバマ政権がトランプ陣営のロシア疑惑を組織的に拡散したとの恨みがある。
オバマ側近、隠蔽工作の阻止狙う
トランプ氏は日の出前の朝の6時26分からツイート。36分間で6本も連発した。オバマ非難と、選挙期間中の駐米ロシア大使との接触が問題視されたセッションズ司法長官擁護がその内容だったが、怒りにまかせて投稿したのは明らか。現職の大統領が前任者をこれだけあしざまに言うのは前代未聞だ。
トランプ氏は盗聴の証拠をまったく示していないが、オバマ氏をニクソン元大統領によるウォーターゲート事件(民主党本部盗聴侵入事件)の陰謀になぞらえて非難し、ホワイトハウスの法律顧問が真相を暴露すると大見得を切った。しかし「証拠もない無謀な言いがかり」(民主党議員)に終わった場合、相手が前大統領だけに単に「ありませんでした」では済まないだろう。
同氏がオバマ非難を強めている背景には、政治的打撃となりつつあるロシア関連疑惑を「オバマ一派が仕組んでいる」(米専門家)と思い込んでいるからだ。トランプ氏は自身がモスクワでのセックス・スキャンダルの疑いをもたれたうえ、「対ロシア制裁見直し」疑惑で国家安全保障問題担当のフリン大統領補佐官の更迭に追い込まれた。
さらには選挙期間中、トランプ陣営の幹部がロシアの情報当局者らと接触していたと報じられ、次いでトランプ氏を応援していたセッションズ氏が上院議員だった昨年、ロシア大使と2度会っていたのにもかかわらず、上院の承認公聴会では会ったことはないと証言していたことが問題となった。娘婿で上級顧問のクシュナー氏もフリン氏とともにロシア大使に会っていた事実も明るみに出た。
トランプ氏はこのところ機嫌が悪く、部下に当たり散らすことが多くなっている。特にセッションズ長官が連邦捜査局(FBI)のロシア関連疑惑の調査に関わらないと宣言したことに「やましいところがあると見られる」と激怒したといわれる。
ロシア関連疑惑の核心はロシアがハッキングなどで大統領選挙に介入、トランプ陣営も選挙に勝つため、クリントン候補の不利な情報をロシアの情報機関と共謀して流させたのではないか、トランプ氏本人もそのことを知っていたのではないか、というものだ。トランプ氏や側近らはオバマ政権が組織的に疑惑を広めたとの恨みを抱いているようだ。
確かにオバマ政権当局者らが政権末期、疑惑を故意に広めたのは事実だ。ニューヨークタイムズ紙によると、当局者らはトランプ政権が発足すれば、こうした疑惑が隠蔽され、もみ消されてしまうと懸念。これを阻止するため、トランプ氏の側近らとロシア人との接触に関する情報を政府内、議会などに広げるのに躍起になった、という。