2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月14日

 これは、エコノミスト誌(2月11-17日号)の巻頭論説です。色々な点に目配りした良い論説であり、この論説の趣旨に賛成です。

 トランプもバノンも、プーチンは手を組める相手であると考えています。ロシアの欧州政策、イラン政策、中国政策、中東政策などについて、ナイーブな情勢判断をしたうえで、そう考えていますが、米ロの利害が大きく異なり、非現実的です。さらに言うと、ロシアはいまやGDPでは韓国以下であり、使えない兵器である核兵器と軍事力を使うことに躊躇がないこと以外に大した国力がなく、手を組んで利益になることはあまりありません。

 共和党の中にはマケインをはじめ、ロシアについてきちんとした判断をしている人も多いです。政権内でもティラーソン国務長官、マティス国防長官、コーツ国家情報長官、ヘイリー国連大使(トランプ政権成立後、東部ウクライナで戦闘が激化したことについてロシアを安保理で激しく非難)など対ロ姿勢が厳しい人も多いです。今後、この論説が期待しているように、これらの人の意見がトランプの対ロ政策をより思慮深いものにする影響を与える可能性はあります。しかし、トランプには、頑固さがあり、自己の意見に固執して対ロ政策を展開する可能性もあります。

 この論説は、プーチンと大きな取引をするなど実現性のない幻想であると言いますが、トランプがやってみないと幻想かどうかわからないではないかと言えば、彼を翻意させるのは難しいかもしれません。

諦めるのを待つしかない

 結局はトランプ自身がプーチンとやってみて、どうもダメだと納得するのを待つほかないかもしれません。プーチンは2018年の大統領選挙で当選することを最重視しており、対米関係で大きな政策変更はしえないでしょうから、割に早くそういうことになり得ます。トランプ政権の一部が構想するような米ロ関係の画期的改善は実現しないと思われます。日本との関係でも、ロシアは北方領土で譲れないでしょう。

 ロシアはユーラシアの国であり、米国の対ロ政策はアジアと欧州の双方に影響を与えますが、欧州が最も大きな影響を受けます。欧州は対ロ制裁解除、NATO重視などで、トランプの対ロ政策にブレーキをかけることになるでしょう。

 トランプが対ロ関係改善を模索する中で、西側に損害を与えることを最小化するように心掛けていく必要はあるでしょう。プーチンのロシアと米国を道徳的な面で同一視するなど、言語道断です。

  
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