2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月23日

 トランプ政権がNATO支持を明確に打ち出したことはこの社説が言うように歓迎すべきことです。それとともに、米国はNATO諸国が防衛費をGDPの2%に増大すべしとの要求を強く打ち出しています。欧州諸国としては、米国の要求を重く受け止め、対応すべきでしょう。

 GDP比2%をクリアしているのはこの社説が言うように5カ国だけです。フランスの防衛費はGDPの1.7%であり、2%に近いですが、ドイツの防衛費はGDP比1.2%、イタリアは1.1%、スペインに至っては0.9%というのは、米国から見れば不十分です。

 ただ、防衛費はそう簡単には増加しえません。防衛費は装備費、施設費と人件費が大きいですが、装備の開発・購入も時間のかかるプロセスです。人件費についても、兵隊を増やすのはそう簡単ではありません。したがって、この問題は今後とも、米欧関係をギクシャクさせる可能性が大きいです。特にドイツが平和主義と隣国を恐れさせないとの観点から低めにしてきた防衛費には増大圧力が強くなるでしょう。NATOの目的は米国を引き込み、ロシアを排除し、ドイツを抑えることにあると言われましたが、そういう時代は過ぎたのでしょう。

日米安保、ビンの蓋論

 アジア正面については、米国はNATO諸国に対するような要求はしていません。韓国の防衛費はGDPの2.5%、台湾は2%、豪州は1.75%です。低いのは日本の1%です。今後、日本の防衛費についてNATOと横並びの要求がある可能性はあるのか無いのか、よくわかりません。「日米安保、ビンの蓋論」もありますし、日本の防衛費は増えているので、要求は無いと思いますが、トランプは予測不可能でもあります。ただ、防衛努力の強化は、中国の軍事的台頭、北朝鮮の脅威など安保環境の悪化に応じて進めるべきでしょう。

 日本が防衛費をGDPの2%にするというのは、防衛費を10兆円に倍増することを意味します。消費税を8%から10%にあげて追加される税収は2.5兆円くらいです。問題はかなり大きいことがわかります。

 米欧関係は、トランプのNATOは時代遅れ、EUは解体してもよい、ドイツの難民受け入れは間違いなどの発言でまだ火種がありますが、NATOへのコミットメント確約は、よかったと言えます。米国の対ロ政策については、まだ疑念がくすぶっていますが、ティラーソン・ラブロフ会談の結果を見るとそれほど心配することもないと思われます。

  
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