昨年度、子どもの虐待に関する相談は10万件を超えた。親からの虐待の末、幼い命が奪われたといった痛ましい事件をニュースなどで耳にすることは日常茶飯事だ。
虐待などを受けた子どもたちを児童相談所内で一時的に保護する一時保護所の内実はベールに包まれている。
それに迫ったのが『ルポ 児童相談所ーー一時保護所から考える子ども支援』(ちくま新書)だ。
全国10カ所の児童相談所を訪れ、100人以上の関係者を取材し、実際に2カ所の一時保護所に住み込んだ経験がある慎泰俊氏に、一時保護所の実態について話を聞いた。
――本書を手にするまで児童相談所内の一時保護所についてほとんど知りませんでした。今回、一時保護所に注目した理由とは?
慎:日本国内で、社会的養護下(社会が親に代わり用意する養育環境)の子どもを支援するNPO法人「Living in Peace」を運営しています。支援している子どもたちのほぼ全員に児童相談所にいた経験があります。彼らが口々に「児童相談所はヤバイ」って言うんです。初めは何がヤバイのか理解出来なかったんですが、よく聞くと児童相談所内には、非常に厳しいルールの下で子どもたちが生活する、一時保護所という場所があることを知ったのがキッカケでした。
――一時保護所とは本来はどんな施設なんですか?
慎:本来は、虐待やネグレクトをはじめ、親と暮らすことが困難と児童相談所によって判断された子どもたちや非行少年を保護し、その後、自宅に戻るのか、児童養護施設や里親家庭に入るのかを決定するための一時的な預かり所です。
そうした環境にいる、児童福祉法で児童と定められている0歳から18歳の子どもたちが保護されています。そのうちの半数以上が親からの虐待を受け、全体では虐待やネグレクト、貧困などの理由で保護されている子どもが7割以上を占めます。ちなみに2014年に一時保護された子どもは延べ2万2000人にも上ります。
しかし、全体の半分ほどの施設はそうした子どもたちに対し大きな心理的ストレスを与える場所になってしまっています。