貿易・経済でも対立
両派の暗闘は最近のトランプ氏の遊説をめぐっても顕在化した。トランプ氏には15日のミシガン州での遊説の後、カナダのトルドー首相の招待を受けてニューヨークのブロードウェーでミュージカルを鑑賞するか、テネシー州で行われるジャクソン大統領生誕250周年の式典に出席するかの選択肢があった。
ミュージカルはNY派が、テネシーの式典はバノン派がそれぞれ強く推したが、大統領は式典を選択し、バノン派の勝利に終わった。バノン派の高官の1人は「ニューヨーク派が1つでも勝ってみろ」と嘲ったと同紙は伝え、権力闘争の根深さを浮き彫りにしている。
安全保障分野や貿易・経済問題でも両派の対立は激しさを増しつつあるようだ。2週間前、大統領執務室で貿易・経済問題の会議が開かれた際、コーン氏が対日強硬派でもあるナバロ国家通商会議議長の発言を的外れだなどと批判したところ、大統領が割って入り、ナバロ氏の考えを擁護したとされる。
ナバロ氏はバノン派の1人と考えられており、この出来事はNY派にとっては痛手だったようだ。プリーバス首席補佐官はNY派の大統領への直接的なアクセスにタガをはめようとしており、両派の確執がさらに激しさを増すのは必至の情勢だ。
トランプ政権はオバマケアに代わる医療保険制度や来年度予算、各省庁の高官不在問題、イスラム圏からの入国禁止大統領令の差し止め仮処分、オバマ政権の盗聴疑惑批判など難問が山積。トランプタワーへの盗聴疑惑では大統領報道官が英国のスパイ機関が盗聴に関与したなどと示唆したため、英国から謝罪を要求されるなど外交問題にまで発展している。
トランプ大統領は権力闘争については十分知っているようだが、部下を競争させるのが良い結果を生むという持論からか、放置したままだ。それどころか、傍若無人とも言える一方的な、思い込みのツイートは収まる気配はない。政権を混乱させ、弱体化させる大統領のこの“自爆的行為”はまだまだ続く。
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