WEDGE REPORT

2017年4月26日

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行政長官選挙に立候補した3人(写真・香港政府新聞処)

 一方で、中央政府は、最初からキャリー・ラム氏の立候補を支持することを決めていた。だた、最初から彼女の支持を表明すると、民主派から攻撃される材料を与えてしまうため、「欽点」(事実上の中央政府による指名)をするのは避けていた。前回の行政長官選挙は、本命だった唐英年(ヘンリー・タン)元政務長官の住宅スキャンダルによって、香港市民が大反発を起こしたため、やむを得ずCY・リョン氏を推さざるを得なくなった。結果的に親中派内で分裂選挙のような状況に陥り、選挙後も影響が残った。今回はそのような事態を防ぐため、見かけ上、親中派同士の対決にはなったが、その裏で中央政府はしっかりキャリー・ラムが当選するように画策していたのだ。

選挙翌日の親中派寄りの新聞、『大公報』と『文匯報』の大量の当選の祝賀広告が

 また、中央政府の香港への締めつけは、また別な形でも現れていた。当選翌日の親中派寄りの新聞、『大公報』と『文匯報』には、大量の当選の祝賀広告が挟まれていた。その広告の量は、日本の新聞における年賀広告の比ではない。祝賀広告を見れば、どの組織が彼女を支持し、また選挙活動の資金源になったのかが一目瞭然だ。人材面、資金面において、彼女が圧倒的であったことを感じさせるものであった。

 新民党の主席で、立法会議員のレジーナ・イップ氏が、行政長官戦に出馬すると事前に発表されていたが、彼女は先述した国家安全条例の制定問題を03年に起こしたことで香港市民から強いアレルギーをもたれていたこともあり、中央政府は彼女を支持する考えはなかったようだ。事実、彼女は立候補するための推薦人の数すら集められず立候補を断念した。

香港最大デベロッパー嘉華国際集団のトップ・呂志和氏(マカオでカジノ経営も行い、1兆円以上の資産を持つ大富豪)。経済界の要人が香港政府を後ろから動かしている。

政治ショーにイライラする香港市民

 ジョン・ツァン氏が出馬表明したことで、中央政府は推薦候補の支持のタイミングなどで微妙なさじ加減を求められた。だが、表面上、民主的な選挙が香港で行われるかのように市民に思わせられたことは幸いだったと言える。

 今回で5回目の行政長官選挙となったが、香港の選挙システムを知らない人が香港のテレビを見たり新聞を読んだりすれば、まさに普通選挙が行われているかのように感じるのではないかと思われる。投票権を持たない一般市民を相手に候補者が握手をしたり、演説をしたりするし、アメリカの大統領選挙のようにテレビ討論会が複数回行われたりするからだ。「各候補者の意見が分かるから、討論会は大事だと思う。でも、私は投票ができないから、イライラする」と、ある香港人は憤る。

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