2024年11月24日(日)

シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年5月9日

 TSMCは、75万枚のキャパを43,591人で運営している。全員が技術者という訳ではないが、数万人の技術者(それも飛び切り優秀な人材)が在籍しているのは間違いない。紫光集団はそのような数万人規模の技術者を何処から連れてくるのだろうか? 

 つまり、紫光集団の計画はおよそ常識では考えられない暴挙に見える。しかし、その計画は、中国国家が承認した文書に明確に記載されているのである。そして、その背後には中国が設立した18兆円に上るIC基金の存在がある。計画経済の国である中国は、本当に、暴挙とも思える計画を実現しようとしている。なぜ、中国は暴挙と思えるほどの計画を遂行するのか?

「世界の工場」となった中国のお寒い半導体事情

 21世紀に入って、中国は「世界の工場」となった。台湾に本社があるホンハイが、中国に100万人を擁する製造工場を構築した。その結果、スマホ、PC、薄型テレビをはじめとする各種デジタル家電など、もはや中国のホンハイなしに、電機製品を世界に供給することは不可能になった。

 これら電機製品を製造するためには、大量の半導体が必要となる。そのため、中国には世界で生産された半導体が雪崩れ込んできている。図1は、地域別の半導体市場の推移を示しているが、2000年のITバブル崩壊以降、日米欧などの先進国の半導体市場が停滞しているのに対して、アジアの半導体市場が急拡大している。その中で中国だけを抜き出してグラフ(赤線)を書いてみると、2013年で既に、800億ドルを超えており、世界の半導体市場の3割が中国で消費されていることが分かる。そして2016年には、中国市場は世界半導体の50%以上を占めるに至った。つまり、中国は、世界最大の半導体消費国になったのだ。

 ところが、図2に示したように、中国で生産されている半導体の規模は小さい。2014年時点では、中国が必要とする980億ドルの半導体の内、自国で生産できているのはわずか125億ドルに過ぎず、その自給率はたったの12.8%しかない。

 現在、中国では、貿易赤字の最大の元凶が、石油に代わって半導体になった。つまり、中国では大量の半導体が必要であるにもかかわらず、半導体生産が低調で、輸入に頼り切っているのが現実なのだ。

中国最大のファンドリーSMICの状況

 半導体の生産工程は、シリコンウエハ上に半導体チップをつくり込む前工程と、そのチップを切り出してパッケージングする後工程に分けられる。

 中国が半導体を自給できない最大の理由は、前工程の不振にある。そのために、ファンドリーの成長が芳しくなく、またXMCが登場するまでメモリメーカーは1社も無かった。なぜ中国は前工程が不振なのかを探るために、中国を代表するファンドリーSMICの状況を見てみよう。

 SMICは、地元銀行のほか米国、台湾、香港などの投資銀行やベンチャーキャピタルが出資して、2000年4月に設立された。2002年に、初代社長兼CEOの張汝京は、4~5年間で約1兆円を投資するという爆弾発言を行った。この投資額は、2002年当時で、台湾TSMCの約5倍、韓国サムスン電子の4倍に近い。日本は大手12社の合計が6250億円であったことを考えれば、この投資額が如何に桁外れのものだったが分かるだろう。


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