人間はみんなポンコツなんですね
出口:先ほど、ポンコツの車でも上手に修理して使いこなせばいいという話が出ましたが、病気もそうですね。治らないと言われたらがっくりしますが、考えてみたらみんなどこか病気になっている。
池谷:そうです。誰もが数十の遺伝病を持っています。だから、健康な人なんていないんですよ。それを前提として考えないと。
出口:そう認識しなければいけないですね。
池谷:そうじゃないと、自分にがっかりしちゃいます。
出口:やっぱり、人間はみんなポンコツなんですね。
池谷:そうそう、そういうことです。
出口:すごくいい言葉をいただきました(笑)。僕は今まで「人生チョボチョボ論」でやってきたんですけれど、今度からは「チョボチョボ&ポンコツ論」でいこう。
池谷:ハハハ。
出口:認知症も、臓器が古くなれば悪くなるように、脳がおかしくなるのも仕方がないんでしょうか?
池谷:仕方ないですね。ただ、心臓や脳は比較的長持ちするのがわかっています。でもやっぱり一部のスペックが、ガタが来るのは仕方ない。
出口:すごく荒っぽい言い方ですけれど、一人でいたら刺激も少なくて病気になるのでは。だからずっと働いたり、いろんな人と付き合ったりしたほうがいいと思います。
池谷:僕もそう思います。結局コミュニケーションや、体を動かしたり歩いたりすること。そのために脳があるわけじゃないですか。
出口:そうですね。
池谷:だから、それを放棄してはいけないんです。私は体が脳を作っていると信じていますから。
出口:脳は体の中にあるから、体を動かすと脳も働く。
池谷:幸い認知症になる人のほうが少ない。仮に2割の人がなるとしたら、残りの8割はなりません。だから、自分は認知症にはならないと信じておいたほうが、確率的には正しいし、健全です。ただ、それでも2割ですよ。たとえば、新車を買って「2割が不良品」だと言われたら、初期不良もいいところですよね。
出口:ええ。
池谷:だからやっぱり僕らって、基本的に初期不良なんです。
出口:ポンコツだ。
池谷:そうなんです。壊れるまでには80年かかりますけどね。でも、よくできているとは到底思えません。
出口:よくできていないと思ったほうが幸せですね。それがファクトですもんね。