中国では、近年GDP成長率が7%台から6%台へと減速するなかで、セクター別ではサービス産業が、企業タイプ別では続々と設立される民営企業が経済構造を変えつつある。なんといっても目立つのは、ここ数年間の就業状況の安定を支えているのが、サービス産業の成長と企業設立(起業)の波であることだ。
「人民日報」等の報道によると、2012~16年の間、都市部において毎年の新増就業者数は1300万人台を、都市部登録失業率(求職登録者数に対する失業者比率)は4~4・1%を維持している。その内容をセクター別に見ると、この5年間にサービス産業労働者が6067万人増加する一方、第1次・2次産業労働者は各々4277万人、891万人減少した。
また、企業タイプ別に見ると、新たな就業先を創り出したのは民営企業だ。15年末の都市部における個人経営企業、私営企業の就業人口は12年比で38・2%、47・9%増加し、就業人口全体に占める比率も19・3%、27・7%(合計47%)に増加して最大の就業受け皿になっている。
こうした趨勢は加速しており、16年のサービス業のGDPシェアは51・6%と最大産業となり、サービス産業が多数を占める起業数は553万社(対前年比24・5%増)を記録している。政府が呼号する経済の「新常態」への転換は、サプライサイドから経済構造を変えようとするものだが、これとは裏腹に、実体経済では新しいサービスを求めるデマンドサイドの圧力が構造転換をもたらしている。
もちろん、労働市場への新規参入人口は1500万人と雇用圧力は依然大きいし、国有企業のリストラで発生する100万人単位の失業者の転職問題も軽視できない。また、サービス業の成長や起業数は地域により異なることから、新たな地域格差がもたらされる可能性もある。
しかし、中国経済全体ではそれを解決するだけの活力が存在する。昨年の国有企業をめぐる動きでは、合併による規模拡大が目立ったが、3月の全人代の政府活動報告(李首相)の国有企業に関する部分では、「ゾンビ企業の処置」や「スリム化・健全化」が明記され、「非公有制経済の発展を支援する」とされた。
地方政府もこうした国策に乗りながら、非公有制経済のイノベーション重視・起業奨励策を続々と打ち出している。広東省の「珠江デルタ国際イノベーションセンター構想」はその代表例であり、民営企業がリードするIT製造業やサービス業を中心に企業活動を支援していくことをうたっている。経済構造改革を推進し、成長を下支えする存在として、サービス産業、民営企業の動向からは目が離せない。
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