2024年12月23日(月)

中東を読み解く

2017年6月8日

 ペルシャ湾岸の小国、カタールが大国のサウジアラビアやエジプトなど中東やアフリカの8カ国から断交されるなど激しいバッシングに遭っているが、背景には大きな陰謀論が渦巻いている。この対立が続けば、2022年のサッカー・ワールドカップの開催や日本の天然ガスの輸入にも影響が及びかねない。

(iStock)

根底に3つの不満

 カタールはペルシャ湾に突き出た小国。人口は230万人しかいないが、豊富なエネルギー資源のおかげで名だたる富裕国の1つである。特に天然ガスの埋蔵量は世界第3位で、最大の液化天然ガス(LNG)の輸出国だ。同国にとって日本は最大の輸出相手国でもあり、日本のLNG輸入の16%を占めるという関係にある。

 カタールを知らしめているのはこうした経済的な面からだけではなく、その独自外交にある。同国はサウジアラビアを中心とするペルシャ湾岸協力会議(GCC)の一員ではあるが、アラブの宿敵イスラエルに国内に代表部を置くことを許すなど他のGCC諸国とは違った道を歩んできた。

 2011年の「アラブの春」以降はとりわけ独自外交に磨きが掛かった。1つはイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を支援したことだ。同組織が最大の勢力を持っていたエジプトではムバラク独裁政権が倒れた後、1年間政権の座にあったが、現在のシシ政権にクーデターで取って代わられた。カタールはこの同胞団に資金援助をしたのだ。

 このほか、パレスチナ自治区ガザを支配する原理主義組織「ハマス」への援助を拡大。ガザの公務員2万4000人の1カ月分の給料を気前よく払ったこともあった。ハマスの指導者ハリド・メシャルをカタールに亡命滞在させて政治活動を容認した。

 2つ目は「アラブの春」でぼっ発したシリアの内戦で、反体制派のイスラム原理主義勢力に肩入れしたことだ。やはり「アラブの春」で政権が崩壊したリビアで散逸した武器・弾薬を買い漁り、輸送機を送り込んでシリアの反体制派に供給した。

 3つ目はイランと良好な関係を維持してきたことだ。カタールの天然ガス資源はペルシャ湾を挟んでイランと通じており、こうした面からも、強大なイランと対立するわけにはいかない事情があった。無論、GCCの盟主であるサウジアラビアがイランと断交するなど敵対関係にあるのを十分に知った上での行動だった。


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