2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月26日

 5月のトランプのサウジ訪問は、この社説が指摘するようにスンニ派諸国との関係を改善するうえで、大きな成果を上げました。その代わりに、イランに対しては、厳しい姿勢を示し、また中東でのシーア派、スンニ派の宗派対立において、後者に味方する印象を強く与えました。これが今後、中東全体にどういう影響を与えていくのか、よく見ていく必要があります。

 イランでは、ロウハニ大統領が国際社会とできるだけ協調することを掲げ、大差で再選されました。イラン人はそういう方向を選択してきています。この方向性は奨励に値しますが、トランプはそういう中で、イランを孤立させるべしと訴え、イランの国際協調を目指す動きを全く評価せずに、対決姿勢を鮮明にしました。

サウジはイランと同じか、イラン以下

 この社説は、イランの選挙はインチキ選挙、イランとは対決するのが正しいという視点で、書かれています。しかし、イランとサウジを比較し、どちらが民主主義的かと言えば、イランです。大統領の上にハメネイ最高指導者がいて、大統領の権限は限られている、立候補資格審査があるなど、問題はありますが、イランでは、活発な選挙戦が行われています。これに対して、サウジは絶対王政の国であり民主主義的要素などありません。宗教的寛容度においても、サウジはイランと同じか、イラン以下です。サルマン副皇太子の改革を称賛するのはいいのですが、もっとバランスの取れた見方をすることが政策の成功にもつながるようにも思われます。

 イラン核合意は、ロウハニの再選で、イラン側から破棄される可能性はとりあえずなくなりました。イランが核合意に応じたのは制裁解除との取引としてでした。テロ支援、人権、中東でのイランの活動を理由に、制裁を、度を越えて続けているとイラン側が反発してくる可能性はあります。そうなった場合、米国として、国際的な制裁体制を再構築するなどできず、困ることになるでしょう。核合意の維持には、十分な注意を払っていくべきでしょう。

  
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