2024年12月20日(金)

塚崎公義の新・日本経済入門

2017年9月7日

 年金は、老後の生活を支える最重要なものです。老後資金の半分以上は年金で賄っている、という高齢者も多いでしょう。現役世代が払っている年金額も、相当な額になっているはずです。そのわりに、年金の制度を何も知らない、という人が多いと思います。そこで今回は、年金の制度について、概観してみることにしましょう。

(s-c-s/iStock)

日本の年金制度は、3階建て

 一般に年金という場合には、公的年金を指す場合が多いようです。公的年金には、全員が加入する国民年金(1階部分と呼ばれる)と、サラリーマン(サラリーウーマン、公務員等を含む。以下同様)だけが加入する厚生年金(2階部分と呼ばれる)があります。それ以外の確定拠出年金(企業型)、確定拠出年金(個人型)などは、私的年金という位置づけで、「3階部分」と呼ばれます。

国民年金の加入者は3つのグループに分けられる

 国民年金は、20歳から60歳までの全員が加入しますが、職業によって、加入の仕方や保険料の払い方が異なります。サラリーマン(第2号被保険者)、サラリーマンの専業主婦(第3号被保険者)、それ以外(第1号被保険者)の3つのグループに分けられています。

 サラリーマンは、給料から厚生年金保険料が天引きされていますので、それによって国民年金保険料も払ったことにしてもらえます。サラリーマンの専業主婦も、夫が厚生年金保険料を支払ったことで、自分も国民年金保険料を払ったことにしてもらえます。サラリーマンの専業主婦は収入が無いから、ということなのですね。

 それ以外(第1号)には、20歳以上60歳未満の学生、自営業者、失業者、非正規労働者、等が含まれます。彼等は、国民年金保険料を自分で払わなければなりません。場合によって免除等の扱いになりますが、そうでない限りはしっかり払わないと老後の年金が受け取れないので、注意が必要です。

 国民年金の保険料は、所得等にかかわらず、1人1カ月1万6490円です(平成29年度の場合)。保険料を20歳から60歳まで40年間納めると、老後(65歳以降)は毎月約6.5万円の年金が受け取れます。夫婦2人で13万円ですから、生活していくには足りませんが、心強い老後の生活の支えとは言えるでしょう。当然ながら、保険料を支払った期間が短いと受け取れる年金も少なくなりますし、場合によっては全く受け取れない場合もあるので、注意が必要です。

厚生年金は、所得に応じて保険料を支払い、支払いに応じて受け取る

 厚生年金は、サラリーマンが所得に応じて保険料を支払い(天引きされ)、支払った保険料に応じて老後の年金を受け取る仕組みです。所得の多い人は生活レベルが高いので、老後の年金も多く必要だろう、ということを配慮したものですね。

 公務員等は、共済年金でしたが、2015年10月から厚生年金に統合されているので、今では公務員等も厚生年金保険料を支払い、老後に厚生年金を受け取るということになっています。

 モデル世帯で見てみましょう。夫が平均月収36万円で40年間就業し、妻がずっと専業主婦だと、厚生年金と国民年金あわせて夫婦で毎月22万円程度の支給額となります。ちなみに引き落とされる保険料は収入の1割弱とすると、65歳から8年生きると保険料の元がとれる方もいらっしゃるでしょう。自分が支払った保険料と同額を勤務先が負担することに加え、妻の国民年金保険料負担がないことも影響しています。

公的年金は、長生きとインフレに備える最強の手段

 公的年金の最大の特徴は、どれだけ長生きしても死ぬまで毎月受け取れる、ということです。これは、高齢者にとって大きな安心材料です。自分の寿命がわかっていれば安心ですが、実際にはわからないので、人々は「100歳過ぎても生きていたら老後の蓄えが底を突いてしまう」と考えて、不安に思っています。そこで、「どれだけ長生きしても、最低限の生活は保証されています」という安心感を人々に与えることが重要なのです。

 人々の今ひとつの不安は、長生きしている間にインフレが来て、老後の蓄えが目減りしてしまう(老後のための預貯金で買える量が減ってしまう)ということです。そこで公的年金は、「インフレが来たら、年金の支給額も増やすので、たとえ預貯金が目減りしてしまったとしても、最低限の生活は出来ます」という安心感を人々に与えることも重要なのです。

 公的年金は、どれだけ長生きをしても支払われますし、インフレ分だけ支給額が増えていきますから、極めて頼もしい存在なのです。


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